いいね。良質だ。想像してみてほしい。
君は映画館に座る。上映前に多種多様な予告が流れる。機械音とともにスクリーンが広がる。3:4から9:16の縦横比に。映画泥棒が警告を発し、Netflixのロゴが赤く浮かびあがる。それからーー
デヴィッド・フィンチャーが始まる。いつもながらクールなオープニング。ツートーンの画。申し訳ないが予告とは比べ物にならない、綺麗な画。ときおり差し込まれる、センスが良いとしか形容しようのない選曲。淡々として説教くさいところがひとつもないストーリー。ひとつのミスも許されない世界で、たったひとつミスを犯してしまった男の話。
極上だ。
この洗練。この色。ずっとここに座っていられる。ここに座っていられる自分は幸せ者だと実感する。
政治性もなく、金儲けでもなく、テーマといえば一個人の生き方に終始して、「ただこういう画を撮りたかったんだ、いくつも」。好きなんだろうな、撮ることが。私はその態度が好きだよ。そんな映像をお裾分けしてくれてありがとうって思う。
もっと多くの映画館で上映してほしかったなあ。Netflixが出資しているとはいえ。
