まーしー

ザ・キラーのまーしーのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
3.0
デビッド・フィンチャー監督が放つ、一人の殺し屋の物語。
7つのチャプターに分かれた構成、名もなき主人公のナレーションを中心としたモノローグなど、異色のスリラー映画といった印象。

暗殺に失敗した殺し屋が追い詰められ、反転攻勢するストーリーは淡々としているため、時には退屈さも伴う。
殺し屋の匠の技やアクションシーンも限定的。
チャプター間の繋がりも見えにくく、どこかぶつ切り感が伴う。
この点、エンタメ性に振り切った『ジョン・ウィック』や『イコライザー』の方が派手かつ華やかだろう。

しかし、暗殺者の世界に浸ることができるのは本作の方のように思う。抑揚の少ないストーリーながらも、不思議と時間の経過を早く感じた。
一人の男性がポリシーに従い行動する様子は、冷淡・冷徹ながらも深みがある。車をレンタルし、スマホを破壊し、自身のポリシーを心の中で呟くことの繰り返し。
1つの殺しがルーティンであり、その様子からプロの暗殺者であることが伺える。

デビッド・フィンチャー監督らしい、夜を中心としたダークな世界観も良い。殺し屋が暗躍する舞台に相応しい。

以上のように、7つのチャプターが織りなす物語は、深淵かつ骨太なもの。
観る人によって評価は分かれるだろうが、一度は観て損はない作品だと思う。

「感情移入するな」「計画通りにやれ」