夜行列車に乗ったカリート

ザ・キラーの夜行列車に乗ったカリートのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
3.8
フィンチャー監督作。ある殺し屋の報復を描いた、静かでとても主観的な作品。

殺しの依頼をしくじった主人公が報復され、それに報復するという、結構それだけの映画。
ですが1つ面白いのは、ずっと主人公の内面表現を伴う展開ということです。

主テーマは、作中どうでもいいと言っているように「無関心」ですね。

完璧に仕事をこなす主人公は、すべてが作業的になり、関心が持てなくなっています。
それでも社会の多数派を食い物にする自分は、世の中を搾取する少数派である…と言うのが主張です。
他の登場人物もまた、自分の行いで発生する影響には無関心、というのも面白くて現代的です。

今回の件で初めて私的に殺しを行う主人公は、その過程の中で、自分の行動が引き起こす結果に向き合います。

合理的・効率化であるというのは、現代では重要です。
ですがそれは退屈で、感情を伴わないという側面もあって、端的に言うと「自分って何?」というありきたりな問いに落ち着きます。

個人主義だが、その自己を失う社会。
要は、自分の信念や感情を失ってもつまらん…という話なんですが、実際の人生には二言論で片付けられない複雑さがあります。

まぁそれこそ主観で良いんですけどね。
ある意味では冗談みたいな映画ですが、面白い作品でした。