YukiSano

ザ・キラーのYukiSanoのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
3.6
ディビッド・フィンチャーは10代の頃、初恋の人のように憧れた人。エイリアン3、セブン、ファイト・クラブに恋い焦がれてしまった。

そんなフィンチャーと「セブン」の脚本家アンドリュー・ケビン・ウォーカーのコンビが復活したとなれば期待したいわけにはいかない。

ところが、初恋の人と久しぶりに会えることで胸高まらせて会った結果、本当にこちらの勝手な思い込みも含めて申し訳ないけど、幻滅した。

あいかわらずセンス良くて、きめ細かいビジュアルへのこだわりは素晴らしいのだけど、それだけ。

やたら繊細な仕事についての話ばかりするのに、自分の指紋がべったり着いたスマホを仕事場付近の道に投げ捨てたり、殺し屋の家に侵入するときの方法も雑だし、銃以外の武器を携帯せずに暗殺しようなどと全くプロフェッショナルとは思えない行動。さらに自分の匂いを覚えそうな犬も射殺しないし、皆に顔見られてるのに店の外ですぐに射殺するし、監視カメラ対策もよく分からないまま。

これがワイルドスピードやジョン・ウィックなら笑ってスルーだけど、貴方達はフィンチャーとケビンでしょ!と面倒臭い古参ファンとしては怒り出してしまった。

殺し屋の仕事に対する拘りや矛盾を描くならライフスタイルから描いて欲しかった。DNAが残ってしまうトイレや食べ物などの処理の仕方まで描かなければ、このキャラクターの本懐には届かなくないか?ジョン・ドゥはライフスタイルを短い時間で説明できてたのに!

フィンチャーはNetflixと大型契約を結んだそうだが、こんな箸休めみたいな企画ではなくもっと野心的なものに挑戦してほしい。彼はたまにパニック・ルームやドラゴンタトゥーのような今さらそんな企画やるなよって言いたくなるような映画を撮る。ソーシャルネットワークやマンクみたいな所まで登りつめたのに、何故に今更このようなやっつけ仕事をするのか。Netflixオリジナルは権利を全部独り占めするためクリエイターはあんまり力を入れないと聞いたことがある。確かに他の大監督なども(特にエンタメ系の)脚本開発が途中のままのような作品を発表している。これは本当にこちらの時間の無駄だからやめてほしい。こんな寄り道するからアカデミー賞取れないんだよ

フィンチャーにはNetflixで、大型予算過ぎて企画頓挫した「ワールドウォーZ2」やアーサーCクラーク原作の「宇宙のランデブー」をやってほしい。すごい楽しみにしてたのだから。

まぁ、今回はティルダ・スウィントンが素晴らしかったので星少しおまけ。

昔のフィンチャーは本当に凄かったのに…と初恋を引きずり続ける私…
YukiSano

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