塔の上のカバンツェル

ザ・キラーの塔の上のカバンツェルのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・キラー(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

庶民派の「ジャッカルの日」という感じ。

一時期は引退を表明してたマイケルファスベンダーが演じ続けてくれるのはやっぱ嬉しい。静なる格好良さとアホさを紙一重に演じれる稀有な役者。

インターネッツに根差した社会は、この地球から未知なる領域の幅を大いに狭めたわけで。相互に視線が交わされ、精度の差はあれど検索すれば瞬時に情報が手元に届く時代。
そんな現代に主人公が折り合いをつけているとは本人談で、殺し屋からも神秘性はいつの間にか失われていっていたんだなぁ…と薄らぼんやり思った。
その辺もキャラクターが自覚的だし。

貴族的なジョンウィックの魔力を剥ぎ取られた、地に足が付いた下請け殺し屋のファスベン兄貴のお話。

ヨガやったり、スマートウォッチで心拍数を測ったり、自分を律する"孤高の殺し屋"像が、現代では"意識高い系"と言うどこか小馬鹿にした単語に集約され、高い精神性を保つには中々難しい現代ですなぁ…というのを皮肉した映画だったかなぁと。

一方で、殺しの道具はAmazonで購入したり、レンタル貸し倉庫が秘密基地だったり、マクドナルドで食事を済ませたりと、スッゴイカッコ良いファスベン兄貴が、どこか俗っぽい庶民派の中産階級殺し屋っていう構図が笑える映画。

本作におけるラスボスが、悪事に無自覚…っていうか、労働者階級というか社会のピラミッドの下の方はあんま意識してなくて、なんか…ごめんね…っていう。
そんなこと言われたファスベン兄貴も、次やったら酷い殺し方するからな、な。ってションボリ帰っていくっていう。

ブラックユーモアな映画だった。
わりと好き。