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トランスフュージョンのMrOwlのレビュー・感想・評価

トランスフュージョン(2023年製作の映画)
4.1

思ったよりも重たく過酷な展開と最後に少し救いもあったのが良かった。
必ずしもハッピーエンド、勧善懲悪ではない展開も良いですね。
どこかフランスやイタリアのノワール作品のような雰囲気も漂います。

退役軍人を題材にした映画は多く、テーマとしては新鮮さはないものの
本作の主人公ライアン(サム・ワーシントン)は戦場でトラウマを負っている訳ではなく、
むしろ退役せざるを得ない状況に陥ってしまったところから、
その過酷な人生に打ちひしがれています。
軍務に就いているときは短髪で、退役後は長髪というのも落差があっていい感じでした。
また、舞台がオーストラリアであることも街の風景などの目新しさを感じられました。
演出なのか、地域の特性なのか、少し色調が違う感じなんですよね。海の色とかも。
そして、時折映し出されるオーストラリアの海の波の大きさが
人生を歩む過酷さを隠喩しているようで良かったです。

本作は監督・脚本:マット・ネイブとなっており、出演もサム・ワーシントン、マット・ネイブル、フィービー・トンキンとマット・ネイブさんが肝です。この方はマット・ネイブ(マット・ネイブルとも(Matt Nable)はオーストラリアの俳優さんで、作家さんでもあります。
『キラー・エリート』でロバート・デ・ニーロやジェイソン・ステイサム、『リディック:ギャラクシー・バトル』でヴィン・ディーゼルら大物たちとの共演を重ねるなど、マルチな才能を持つ人ですね。本作でも、サム・ワーシントン演じるライアンの上官、ジョニー役として重要なキャラクターを演じています。マットさんの演技も良かった。

主役のサム・ワーシントンも47歳か~、渋くなりましたね。
サム・ワーシントンはイギリス・サリー州ゴダルミングで、イギリス人の両親の元に生まれましたが、
生後6ヶ月の時にオーストラリアのパースに移住し、ロッキンガム(ロッキングハム)で育っていますのでオーストラリアの俳優さんです。
アバターで知っている方も多いでしょう。
本作では軍人の時の良き父・良き夫と、打ちひしがれてしまった元軍人の父のギャップのある演技が良かったです。
息子ビリー役の俳優さんも良かったですね。かなりのイケメン。

本作のタイトル、トランスフュージョンですが、
意味は、輸血です。
ライアンの妻がいわゆる黄金の血液の持ち主で、息子のビリーも受け継いでいます。
「黄金の血液」とは、赤血球の表面に抗原を一切持たない血液型「Rh null(アールエイチナル)」型の通称で
Rh抗原を全く持たない希少な血液のため、O型の場合であれば誰に対しても輸血できる、という貴重な性質があることから「黄金の血」とも呼ばれている血液のことです。
そのため、母息子とも献血をして社会貢献しているのですが・・・人生は過酷です。

そしてトランスフュージョンのもう一つの意味は
1つの容器からの別の容器へ液体を注ぐ行為。
または
1つの容器からの別の容器へ液体を注ぐ行為。
映画を深読みすると、母から子へ愛情や命が受け継がれている、ともとれますし、過酷な運命が父から子へ液体を注ぐように流れているともとれるかも。
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