そんなもんかどんなもんか

アンダーカレントのそんなもんかどんなもんかのレビュー・感想・評価

アンダーカレント(2023年製作の映画)
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うーん。評価がつけられない。ちょっと今の自分には数字という形で評価をして良い作品じゃない。それぐらい消化するのが難しいかった。

鑑賞中は起伏が少なくて平坦に思えて、つまらない気がしていた。みんなゆっくりボソボソ喋るし、大きな展開も少ないし、退屈な気がしていた。
でも、だんだんと思いだせば思い出すたび、すごく考えることがあって、頭の片隅にずっとこびりついて離れなくて、映画内のセリフもストレートに刺さって離れない。実はものすごい作品を見てしまったのではないかと思える一方で、エンターテイメントとしての楽しさはあるかと言われると…全肯定はできない。

メッセージ性は凄まじい。「他人を本当にわかるとはどういうことなのか」。これが浮き彫りになる。自分以外の人間は、友だちは愚か家族だって、本当の意味での中身を知ることなんてできない。外見はいくらでも知れるが、中身、考えていること、本性は誰にも知ることができない。だから「この人はこういう人」と、自分の信じたい相手像を作り出す。水面下…それよりもっと下の下流の方、そう、人のアンダーカレントは誰にもわからない。
一緒にいた時間が長くても、奥底まで手を伸ばすことはできないし、本当は自分のことだって分かっていないのかもしれない。

井浦新の役が謎すぎて、なんてこんなキャラクターいるんだろう、真木よう子が瑛太を探すだけでも良いじゃないかと思ったけど、最後で井浦新の存在理由が分かった。うん、やられた。
瑛太の、何考えているかわからない、掴めない雲のような人間感が良かった。

あと、リリーフランキーがいなければきっとわたしは鑑賞中寝ていたでしょう。リリーフランキーのおかげで意識を保ったまま、そして少しの面白さを感じながら鑑賞できた。

この映画は友人とか家族とかと一緒に見るより、1人で見て、1人で噛み締めて、1人でアンダーカレントに浸っていくのが良いと思う。

…うん、やっぱりすごくいい映画だったかもしれない。