ノラネコの呑んで観るシネマ

アンダーカレントのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

アンダーカレント(2023年製作の映画)
4.5
夫が突然失踪し、一人で銭湯を経営する女性のもとに、謎めいた旅の男が現れ働きはじめる。
夫はなぜ姿を消したのか、男は何者なのか。
豊田徹也の同名漫画に、忠実に作られた実写映画。
登場人物の心の奥底に向けて沈み込んで行くような感覚は、映画でもそのままだ。
端的に言えば、人間はどこまで人に自分を見せられるのか?いやそもそも自分に対しても見せられているのか?という話。
タイトルには「水底」と同時に「暗示」と言う意味もある。
失踪した夫も現れた男も、主人公自身にも表層の人格の底に、自分でもよく分からない別の自分がいる。
奇妙なトライアングルを形作る登場人物たちは、物語を通して今まで見えていなかった自己の内面と向き合わねばならない。
芸達者が揃っているが、MVPは原作からして当て書きだったんじゃないの?と思うくらいのハマりっぷりのリリー・フランキー。
構成から進行までほぼ原作通りだが、ラストを変えてきた。
個人的には、改変しなくても堀と田島の会話でその後起こることは想像がつくし、映画版は少々引っ張りすぎと思う。
まあ新たなラストは、それはそれで想像力を掻き立てるものだけど。
ブログ記事:
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