たくみ

アンダーカレントのたくみのレビュー・感想・評価

アンダーカレント(2023年製作の映画)
3.5
【人をわかるってどういうことですか?】
原作未読。
今泉監督は、原作ものをやるときは今泉節が抑え目になるので今回はどうなるのかなと楽しみにしていました。
人間の違う側面を描く事も出来る事を証明した作品だと感じました。

ネタバレが気になるような展開があるような作品ではないかと思いますが、以下ネタバレ全開で書いていきますのでお気を付けください。

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鑑賞中からずっと感じたのは今作がとにかく「対話」の映画だという事でした。
ほとんどが会話劇にも関わらず上映時間は2時間半近くあります。
静かに淡々と進んでいくので寝不足で行かない方が良いと思います。
細野さんの音楽も相まって自分はかなり危なかったです。

パートナーや身近な人を知った気になっているが、果たしてその人の事を本当に知っているのか。
自分が秘密にしている事があるなら、相手もそうかもしれない。
秘密があった事に悲しみ閉ざしてしまうのではなく、何故秘密にしていたのか、それをどう受け入れるのか。
それは対話によってしか解決出来ない事に気づいた主人公たちがそれぞれ抱えていた思いを静かに水に溶かしていくような映画でした。

個人的に堀の最後の行動が印象的でした。
堀は最後まで真実をかなえに伝えることなく去ろうとしますが、結局出来ず家に戻ってきてしまう。
食事中、かなえが「ドジョウ実は苦手なんですよね」と言った時に泣き出してしまったのは、かなえが包み隠さず話す姿と自分を比較して後ろめたく感じたからなのではと感じました。
後悔できるだけの純粋さが残っている人間だからこそ今後も助け合いながら生きていけるような気がするラストカットはとても良かったです。

作品としての感想はこれくらいで、ここからはただの戯言なので見たくない人は無視して下さい。
本作を鑑賞して、自分は今泉監督にはやはり喜劇を求めているのだなと強く感じました。
どこか噛み合わない会話のあの微妙な空気間で笑える瞬間を期待しつつ見てしまい、それが無かったので少し寂しく感じました。(リリーフランキーさんがその役割だったのかもしれないがいつもより圧倒的に少ない)

今泉監督作品の良さは「良い軽さ」だと思っています。
『かそけきサンカヨウ』『ちひろさん』など、人が内に秘めてる思いにフォーカスを充てた作品は軽いからこそ悩みすぎなくていいんだよと押し出してくれている気がしました。
それと比較すると今作はずっと重たくて、求めているものとは少し違いました。
少しテーマが壮大過ぎたのかなとも感じました。

でもこういう作品も出来るって事は本当に凄い事だと思うし、多くの人には刺さる作品なのではないかなと思います。
いつか見返したら自分にも刺さるかもしれないからこそ、このタイミングで観て知れたのはとても良かったなと思います。


【その他メモ・独り言】
・リリーフランキーはリリーフランキー
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