千年女優

アンダーカレントの千年女優のレビュー・感想・評価

アンダーカレント(2023年製作の映画)
3.0
銭湯を切盛りする女性店主で、夫の原因不明の失踪以来塞ぎ込んでいたものの再開を決意した関口かなえ。組合の紹介で応募した堀隆之を住み込みで雇うことにした彼女が、寡黙な彼の誠実な仕事ぶりに助けられて生まれた余裕から探偵を通じて夫探しに乗り出しすも、やがて自分が封じていた過去の記憶に苛まれる様を描いたドラマ映画です。

月刊アフタヌーンで多くの作品を連載してきた豊田徹也の代表作でアングレーム国際漫画祭出品を機にフランスでも刊行された同名漫画を精力的に作品を撮り続ける今泉力哉の監督で映画化した作品で、「言葉とは裏腹の本音」を表すタイトルが冠された物語を真木よう子が演じて井浦新や瑛太にリリーフランキーといった面々が脇を固めます。

その名の通り内省的で「嘘」というキーワードを通じて登場人物達が複雑に絡み合う物語を、上積みはなくとも原作を損ねず映像化する職人監督らしくじっくりと綴ります。お話を展開する要所の動き出しは漫画的とやや強引で原作から加えられたラストも些か蛇足感がありますが、抑制された演出と演技でムードを作る抒情性のある一作です。
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