カタパルトスープレックス

アンダーカレントのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

アンダーカレント(2023年製作の映画)
3.8
同名マンガが原作の今泉力哉監督作品。

今泉力哉監督はとても特徴的な作品を作る作家性の強い監督です。生活音が誇張される世界で、すれ違う人たち。時折流れる音楽とオフビートなストーリー展開。そして、最近の傾向ではちょっとしたカタルシスも用意されている。最後はハッピーエンディングではないのだけれど、行き着くところに行き着く心地よさと居心地の悪さの同居する感じ。この傾向は『街の上で』(2019年)から特に顕著で、『窓辺にて』(2022年)もそうでした。

今泉力哉監督が原作脚本だと、この特徴がとても際立ってるのですが、原作ありの作品だとちょっと弱くなる傾向があったと思います。最近だと『ちひろさん』(2023年)や『かそけきサンカヨウ』(2021年)、『あの頃。』(2021年)なんてそうでした。しかし、本作はしっかりと今泉力哉監督の色が出ていたと思います。

主要人物は死んだ父親から譲り受けた銭湯を営む関口かなえ(真木ようこ)と失踪した夫の関口悟(永山瑛太)。銭湯で働くことになった堀さん(井浦新)の三人です。タイトルの「アンダーカレント」が示すように表面からは見えない気持ちや感情が三人にはある。それは一体なんなのか……という話です。

関口かなえを演じる真木ようこがとてもよかった。表面の明るいペルソナと裏の影のあるペルソナをきちんと演じ分けている。それがはっきりと分かれているのではなく、揺らいでいる感じ。後半にそれぞれのペルソナがどこから来るのか分かるのですが、これまでの演技にとても納得しました。

それでもやっぱりボクは今泉力哉監督が原作を書いた作品が好きだなと。本作もいいんですが。