カツセマサヒコ

アンダーカレントのカツセマサヒコのレビュー・感想・評価

アンダーカレント(2023年製作の映画)
4.6
別に泣いたからといってその作品の評価が上がるわけじゃないと常々思っているが、そのうえで、どうだ。井浦新の迫真の演技。映画館で声が漏れるほど泣いてしまったのは、この登場人物たちに心の深いところまで掴まれてしまったからだと、強くそう思う。

この作品のこと好きな人とは一緒にお酒が飲みたいし、お茶をしたいし、銭湯に入りたい。今まで誰にも言えなかったこと、自分でも塞いで見ないようにしてたこと、つきすぎた嘘で自分自身のことすらよくわからなくなってること、いろんなこと、自分にもきっとあって、それが些細なきっかけで、心の湯船から全部全部溢れてしまうような。

みんな頑張って人間やってる。世間の流れにのって、上手に泳いでる。そう見える。でも本当はどうなんだ?

きっと自分だけじゃないとそう思わせてくれる、不穏なムードの中、心の闇の奥、それでも孤独ではないと思えることこそが救いとなるこの作品を、頻繁にじゃなくていい、人生で何度か見返して生きていたいと思っている。