バキバキのスマホ、ウーバーイーツ的なデリバリーで働いてて、作家志望なのにいまは何も書けていなかったり、よくある株やお金稼ぎ系のあやしいYouTube動画を見始めたり、彼女の意向を全く聞かずに住居の手配をしたり（モラハラやDVの伏線だ！）、お金が無くて貧困に窮する若者は国境をまたいでもたいして変わらないのに驚きます。窃盗にあったと嘘の通報したときに犯人特定の人種に限定する誘導を受けて人種差別に直面するのも（後半で明かされる重要な真実があり、彼は移民です）、困って詐欺に手を出すのも、嫌な所ばかり同じです。
モラトリアムを良く書けていると思いますが、前半はファムファタルを出したり村上春樹的というか、ナルシシスティックな内的世界に入り込みすぎています。でも、そうじゃないと移民の物語を見てくれないのですよね。どんなに真実で、移民じゃない人たちと同じ陳腐な生き方と考えを持っていたとしても。最後のとりつぎ編集者の言葉が非常にメタ的に聞こえます。「愚痴っぽい自叙伝なんて誰も興味ない」「ブログに書け」「自主製作映画でも撮る気か？」。
映画自体がちょっと劇中劇、主人公のオートフィクション（私小説）的な作りでもあります。
結構面白かったけど、村上春樹的世界観が今は好きではないのであまり印象に残らないかもしれない。
