2023年 32本目
これまで多くのセカイ系が世に放たれてきた。そしてそのほとんどが、大切な人あるいは誇大化されすぎた自意識を救うため、セカイを犠牲にしてきた。本作によって、セカイ系はひとつの到達点に至る。明確な意志をもって、「この世界は救えない。よってこの世界を救わない。」と選択する。一見暴力的で危険な思想に見えるが、いや、確かに危険な思想ではあるのだが、その選択は強いカタルシスをもたらす。暴走する資本主義。私欲に支配された政治。戦争と復讐の連鎖。ネットミームによって暴徒化する集団。誰よりも優しい心を持つ人にとって胸を痛めるような光景は、今後も永遠に続くことだろう。決して解決されることはないだろう。しかしその唯一の解決策、セカイを救済する手段は、セカイを終わらせること。自己中心的な理由の介在なく、純粋に考え抜き及んだ結論に、ある種の美しさを抱くのだ。
