あんじょーら

世界の終わりからのあんじょーらのレビュー・感想・評価

世界の終わりから(2023年製作の映画)
2.2
紀里谷和明監督     KIRIYA PICTURES     吉祥寺アップリンク


タイトルが気になって観に行きました。こういうおしまい、という雰囲気が好きです、根がネガティブなもんで。初めて観る監督。


両親は事故死して祖母と一緒に暮らしていたのですが、その祖母も在宅で病死してしまった、高校生のはな(伊藤蒼)は不思議な夢を見ているのですが、そこでは昔の日本っぽくて、侍が争っています。というのが冒頭です。


えっと、気分的に「ミッドナイトスワン」を観た後なので寛容な心持ちです、ある種すべての映画に対して優しい気持ちにさせるなんて、なかなか出来る事じゃないですよね。でも、いくらすべてに優しい気持ちになりたいから、と言ってももう金輪際2度と見たくないな。


志はかなり高いと感じました。そして結構絵は頑張ってると思います、多分そんなに潤沢な予算があるわけじゃなさそうですし(というか日本映画界で潤沢な予算なんてどこにもないでしょうね・・・)、それなのに、かなり難しい絵が必要なストーリィ。まず、この点をダメなのではなく、志として評価したいです。


まず、良かった所(この出だしで察してください)。


主演の伊藤蒼さん、の泣きの演技は相当です・・・個人的に泣かれる映画って好きじゃないけれど、全編にわたって、ずっと困惑して困ってます、常に、です。まぁそういう脚本なんだから仕方ないのかも知れませんし、この俳優さんの眉毛が凄く特徴的に困ってる。なので泣き一辺倒の演技なんですけれど、それなりのバリエーションがあって凄い。それにずっと困ってる演技を続けるの、凄く大変だったと思います、お疲れ様でした、と言いたい。初めて観た方と思ったら、吉田恵輔監督「空白」のあの娘でしたか・・・他の映画でも困ってる!


夏木マリさん、この人しかこの役にある程度の説得力を持たせる事は出来なかったと思います、ご苦労様でした、と言いたい。

それと侍の役の出演者の皆様方、かなり大変だったと思います。侍をこういう形で使うアイディアは悪くないし、日本映画の結構重要なコンテンツだと思うので、それも良かった。

あと、とある女子高生がラスト近くにちゃんと〇〇されたのは溜飲が下がって良かったです。

そして何より、モノクロの絵はかなり頑張ってると思います、それなりにお金をかけていると思います、この点も良かった。



総合的には、1990年代のヱヴァっぽい映画です。だから、この映画の世界観に没入出来た人にとっては素晴らしい、という評価になると思います。逆に乗れなかった人には酷評されてしまうでしょう。


この規模の映画で扱う脚本じゃなかったのかも。ここが最初の一歩目ですけれど、このズレを志と捉えれば、凄く頑張った、とも言えるし、ズレと捉える人には最初からダメってなる。


頑張ってるだけじゃダメなのが映画という芸術でもありますよね。


非常に独特の世界観。でもオリジナリティはあまり感じないです、何処かで見た、何処かで読んだ、そういう感じの世紀末系のセカイ系。


だから目新しさは無いです。でも頑張ってる。だけれど、細部にいろいろ無理があるんですよね、それに、2023年という今となっては、1990年代のモノが古く見えるのは仕方ないと思います。


いろいろ言いたい事はあるけれど、映画を観ている最中は割合、どうなるんだろう、という気持ちになったし、何しろ優しい気持ちになっているので、そういうのは言語化しなくても良いと思いました。


1990年代の映画が好きな方にオススメ致します。ただし、ミッドナイトスワンを観た後の評価です。もし、観てなかったら、と考えると、怖い。