こつぶライダー

世界の終わりからのこつぶライダーのレビュー・感想・評価

世界の終わりから(2023年製作の映画)
3.5
漫画スラムダンク、過去編の安西先生より


「まるで成長していない………」


紀里谷和明監督の引退作品としてクローズアップされた今作。

公開当時、大々的に取り上げられながらも、あまり良い評判は聞かなかったが、紀里谷監督なのでその点はあまり気にならなかった。


私は監督のデビュー作である『CASSHERN』推しである。

かなり酷評が目立った割に、カルト的な人気もある作品。
原作アニメ「キャシャーン」好きには非難の嵐だったようだが、中二病な作風と重いテーマにぶち刺さった。


それこそ上映当時中学2年生だった私からすると、あれから20年の月日が経過して、人生の酸いも甘いも経験した私と監督との一騎打ち的な気持ちで向き合う今作だったのです!
(めっちゃ壮大!!!笑)


まず、物語がとある女子高校生が世界を救うヒーローものだと知る。

幼い頃に両親を失い、共に暮らしていた祖母も亡くなり、天涯孤独となり、学校でもなかなか馴染めず友達はいない。。。

唯一気にかけてくれるのは、足の悪い幼なじみのタケルくんくらい。

そんな少女が夢の世界が過去と繋がっていて、それをヒントに世界の終末から回避すべく戦っていくというSFファンタジーとなる。


まるで少年漫画のようなストーリーなのだが、主人公の少女の中にある社会からの疎外感や、自己肯定感の低さなんかがモロに伝わってきて、昨今の悩める若い子に通じるものがあってなかなかリアルでしたね。

それを可能にしたのは、明らか伊東蒼さんの演技の上手さでした!

『空白』『さがす』等の社会派ドラマで存在感を示してきた彼女からすると、当然な実力を示した形ですね。


はじめは、よく詳細が掴めないまま世界を救う一直線で動き出すわけだが、中盤からは更に難しくさせていく展開に紀里谷監督らしさを感じました。

説明しているようで、説明になっておらず、謎の解説のつもりが更に謎を生む展開に陥るわけ。

すると、なぜか感情の起伏を作るべく、我々の心に訴えかけるような壮大なテーマをぶつけるわけです。


いや〜今回もやられましたね。


この起承転結は『CASSHERN』と変わらないと思います。

ただし、あくまでも最後は救われるというか、鬱展開にしないための工夫が為されており、現実路線と理想路線との融合をして、エンタメ感を残しておりました。


この結論には賛否両論あっても良いと思います。
どちらにせよ、監督が見せたい陰影の画もあり、ダークな世界観もあり、十分に魅力が詰まった作品に仕上がっていたと思います。


まるでダメダメな脚本、生きてる感がないキャラクター、、、そういうのも含めて、これぞ紀里谷和明な作品でした。

つまりは、全く成長しておりませんでした(笑)
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