男に頼るばかりではない新しい女性像を描いた吉村公三郎監督初のカラー作品。ずっと観たかったので感激です!
主人公は女性でありながら父と共に京染めの職人として働き、ろうけつ染めの新しいデザインを描き、自ら営業もする。当時では珍しい仕事に生きる女性。
周囲に縁談を進められるが断り続け、偶然出会った妻子持ちの大学教授(上原謙)と恋に落ちる。不倫もののロマンスではあるけれど、主人公の潔さはあっぱれだし、強くて真っ直ぐで魅力的な女性像に、観終わって爽快感。
山本富士子さんは本当に和装がよく似合う。少し肉感的な体つきとふっくらとした頬、しなやかな京ことばが艶っぽい。どこか親しみやすい顔立ちなのに、格別な気品を感じます。
4Kデジタルリマスター版で、カメラマン宮川一夫氏の映像がより美しく映えました。
突然の雨で雨宿りする2人を後ろから捉えた夜のショットから、宿で灯りを消して送り火の橙色の光の中で体を重ねるシークエンスは、美しすぎてセリフが入ってこなかったぐらいでした。夜の照明と撮り方が、神。
染め物の赤、赤いハエ、デモ隊の赤い旗、赤の使い方が巧みでした。また、高台から望む当時の京都の街並みは、黒の瓦屋根で統一され、フィレンツェのように美しかったのが印象に残りました。素敵やなぁ。