しの

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search/#サーチ2(2023年製作の映画)
3.7
大枠の構造は前作と同じだが、今回はZ世代が主人公なのでとにかく操作も捜査も速いし使うツールも多いので気を抜くと置いていかれる。スケールの大きさもドラマチックさも前作以上で正しく続編という感じ。話が入り組みすぎて何ソレ? な部分もある気がするが、総じて楽しかった。

前作では画面上の作為的なズームが気になったが、今回は大仰な劇伴とともに全編でそれを多用している。しかしこの演出スタンスがむしろ、とにかく何事にもスピード感がありデジタル上でドラマチックな体験をするZ世代主人公の体験にマッチしていて、前作ほどは気にならなかった。

一方で「秘密を覗き見する/される恐怖」は前作以上に生々しく感じた。なにせマッチングアプリのやり取りから何から全部突き止められてしまうのだから。物語上でこそ捜査が進行しているという見え方にはなっているが、つい暴かれる側の視点にも立ってしまう。パスワードは絶対に使い回しちゃダメだと思った。

また前作には「存在がデジタル化する恐怖」「リアルコミュニケーションの不足」等のテーマ要素があった気がするが、本作は主人公の設定からしてデジタル自体への恐怖や不安はない。これはコロナ禍を経た生活の変化とも一致する価値観だろう。

従って、今回はシンプルに「親しい他人の秘密」についてのスリラーになっており、展開のツイストが多い割に見やすい。ただシンプルなぶん、正直言って母娘のドラマに揺さぶられるものはそこまで無かった。むしろサブプロットの父子のドラマの方が良い。そもそも今回の真犯人の動機がよく分からないというか、あんな回りくどいことして元々は何がしたかったの? という疑問も湧くし。あと、途中で「見る/見られる」が逆転する瞬間があったりするのだが、あまり活きているとは思えず、むしろこれも真犯人の「何がしたいの?」に繋がってしまう。

とはいえ、今回でいくらでも続編が作れる設定にしていることが判明したので、時代ごとのデジタルとの向き合い方を体験するシリーズとして続けても面白いのではと思う。心地よい情報過多っぷりだった。
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