幽斎

search/#サーチ2の幽斎のレビュー・感想・評価

search/#サーチ2(2023年製作の映画)
4.4
恒例のシリーズ時系列
2014年 3.8 Open Windows Elijah Wood主演、シリーズの元ネタ
2014年 4.2 Unfriended 元ネタをブラムハウスがパクったと噂に
2018年 4.0 Unfriended: Dark Web レビュー済、此方が公開は早い
2018年 4.4 Searching スタンドアロン的な前作
2023年 4.4 Missing 本作、前作との直接的なリンクは無い

前作の邦題「search/サーチ」PC画面のみと言う斬新なスタイルで、新たなデジタル・スリラーとして世界中の観客の心を掴んだ。制作したソニー・ピクチャーズは直ちに続編に着手したが・・・。Tジョイ京都で鑑賞。

PC画面の映画と云えばElijah Wood制作、主演2014年「ブラック・ハッカー」。当時は天才ハッカーが持て囃された時代。原題「Open Windows」、当時のWindowsはXPがサポート終了、7の後継8.1がアップデートされたWindows 10発表。アメリカ流の「All Digital Platform Window」も所詮、世界初のファウンド・フッテージのレビュー済「ジャージー・デビル・プロジェクト」、続く「ブレアウィッチ・プロジェクト」「パラノーマル・アクティビティ」フェイク・ドキュメンタリー先輩の二番煎じに過ぎないが、リテラシーが高いから低い人まで漏らさず理解出来る洗練された演出手腕が求められる。

「ブラック・ハッカー」スペイン映画だが、ソレをパクったと噂されたのが皆大好きBlumhouse。パソコン画面のみ「アンフレンデッド」仕掛け人はカザフスタン出身のプロデューサーTimur Nuruakhitovich。「ナイト・ウォッチ」「デイ・ウォッチ」ロシアで大ヒットさせ日本上陸も果たした辣腕はJason Blumと組んで、機を見るに敏な嗅覚で、レビュー済「アンフレンデッド: ダークウェブ」続編も成功させた。

ロシア系の彼はハリウッドのWhitewashingに敏感に反応、Warner Bros.が主要キャストをアジア系のみ「クレイジー・リッチ!」制作の噂を聞き、進化したデスクトップ機能をフューチャーしてアジア系アメリカ人主演「search/サーチ」制作、ソニー・ピクチャーズは公開前に無料上映会を敢行してメディアに大きく取り上げられ劇場で拡大公開。「アンフレンデッド」が無ければ「search/サーチ」も本作も存在しない姉妹関係(笑)。アメリカでは一連のデジタル・スリラーを「Screen Life Thriller」と言う。

Aneesh Chaganty監督はインド系アメリカ人、サーチの成功で独立が認められ自身が書いた脚本でレビュー済「RUN/ラン」制作。続編は「search/サーチ」「RUN/ラン」編集を担当したWill MerrickとNick Johnsonに一任、精神的な続編としてコンセプトを踏襲。演出のキレ味がモットーなので、正しい人選と言える。問題は今更パソコンの前に主演が拘束されるリスク、スマホの進化でレビュー済「#フォロー・ミー」「スプリー」、敢えてパソコンに拘る必要は無い。デバイスの進化=プロットの変容、PC金縛りの本作は意外な難しさを抱える。サステナブルな続編では無く、前作を予習する必要はない。

ソニー・ピクチャーズは続編の制作には意欲的だったが、本作の本当の主役はアプリなので、ソレが進化しないと物語に変化も生まれず、市場の動向を慎重に注視。「アンフレンデッド」シリーズ終了でGOサインが出た後COVIDの影響で一年遅れたが、ソニーの株主である私が一番驚いたのはXperiaでは無くiPhone。007ですらXperiaなのに(笑)。

主役は18歳の女性、失踪したのは母親なので前作とプロットもリバーサル。演じたStorm Reidはレビュー済「ドント・レット・ゴー 過去からの叫び」子役から数年しか経てないが、現在19歳の彼女は文字通り等身大の演技を披露。劇場でツッコんだのは、今の18歳がスマホなら分るけど、此処までMacBook(アップル社製ノートパソコン)操れるのか正直微妙(VAIOじゃ無いんかい!(笑)。あのスキルなら御社で採用したい位だが、彼女の手練手管に観客がツイて来れるかギリギリの線だろう。後は字幕が画面から置いてけ堀。吹替えもネット用語を限られた時間でインするのはムズイと思う。

【ネタバレ】物語の核心に触れる考察へ移ります。自己責任でご覧下さい【閲覧注意!】

原題「Missing」の通り行方不明が次々と入れ替る秀逸なプロット。始めはKen Leungが怪しいが交際が本当だと分り、ライブカメラでプロポーズするシーンを見て自らの疑いに反省。マッチングアプリで90%何て相手を調べた上でのアプローチが見え見え、態々アメリカから見えるライブカメラでプロポーズと為ると、此の時点でお察しレベル。ホテルのカメラが48時間と言うミスディレクションを上手く活かしてる。因みに日本のホテルの監視カメラは通常2週間は記録される。

第二のMissingは偽装誘拐事件。観客の先読みを許さない制作側の警告だが、初めから良く見れば伏線は有った。本編で解説してくれたので割愛するが、母親を演じたNia Longの髪型に違和感を感じた理由がソレとは。ソックリ女優も冒頭に出すサービス振りで、観客が「おや?」思った瞬間に画面を切り替える早業、普通の人は流されてしまうだろうが、伏線の回収率は私が観てもほゞ完璧、舞台は再びロサンゼルスに戻る。

第三のMissingは弁護士のヘザー、演じたAmy Landeckerが微妙にエロい(笑)。スリラーで弁護士が疑惑の当事者の場合は殆どがミスリード、本作も口封じの為に殺されるが彼女の違和感の原因は守秘義務、弁護士も専任が有り彼女の場合はDVと言う伏線もキチンと有った。此の時点で主犯はロサンゼルス在住、友人を除けば登場人物で思い当たるのは一人しか居ない、Ken Leungと関連ある人物で実際に登場したのも一人しか居ない。前作の真犯人をご存じの方は、此処で引っ掛かる様に計算されてる。

最後のMissingは主犯の父親。鼻血が出たのは意味深でNia Longと口論して興奮した後で撮影。喧嘩も作為的で「頭に血が上ると何をするか分らない」証拠に使える。ビデオはトリミングされたが、ソレもアンフェアでは無く、寧ろ娘が好きな父親の葬式を覚えてない、と言う台詞で父親は死んでないと推察出来る。前作の結末を知る観客は「どうせアレだろ?」余裕を持って鑑賞出来るが、編集出身の監督コンビらしく、入念に伏線が刷り込まれてる。前作はスリラーの鉄則「犯人は最前列に居る」、本作も展開の速さで誤魔化さず、マクガフィンに煩い観客に真摯に向き合う姿勢は高く評価出来る。

前作はアジア系らしく家族愛を前面に押し出した。アフリカ系の本作では逆転して「Paternalism」。未成年の子供に対する親の介入は強い立場に居る者が、弱い立場に或る者の利益と称して、本人の意志に関わらず干渉する。プロットの肝はDomestic Violenceで疑う余地も無いが「家父長は惡手」と言う視点は些かアゲインストに過ぎる気もするが、ソレはデジタルの世界でも変わらないと本作は警告する。

私はSNSは一切ヤラないが、デジタルネイティブZ世代が、デバイスを縦横無尽にハッキング。登場するアプリは全て実在、Google翻訳を使いスペイン語で会話。ストリートビューでホテルの監視カメラの特定までは朝飯前。タクシーの代わりがUber、日本にも困ってる人と、手助け可能なサポーターを繋ぐ「May ii」アプリが有るが、アメリカは「Task rabbit」買い物や掃除を請け負い小遣い稼ぎ出来るアプリが大人気、コロンビア版が「Go Ninja」日本人には何かジワる(笑)。https://mayii.jp/

未成年と言うプロットは母親から貰う「お金」が足枷と成り、有料アプリを使う事に制限を加えた点は実に面白い。良い人ハビ役Joaquim de Almeidaは往年のベテラン俳優で代表作「グッドモーニング・バビロン」「今そこにある危機」「デスペラード」「エネミー・ライン」「ワイルド・スピードMEGA MAX」ポルトガル出身で流暢なスペイン語を披露。本作で唯一の瑕疵が彼の存在が偶然且つ都合良すぎる気もするが、無機質なデジタルの世界でコメディリリーフとして流石の存在感だった。

日本は韓国由来の라인LINE一択の様だが、iPhoneならFaceTime、AndroidならWhatsApp、誰でも世界中の人と実質無料で会話が出来る。秀逸なのはソニー・ピクチャーズだけどアップルの脆弱性は素通り、徹底的にGoogleのセキュリティの甘さを指摘する。Googleの便利さを無料で享受出来る見返りに、私達は個人情報をGoogleに提供する、薄気味悪さを感じさせない様に腐心。まあ、天下のGoogle様をディスれるのは、世界のソニーだけかもしれない(笑)。

Filmarksも、専らスマホと言う方も多いだろう。私は全てVAIOで文書を起こすので、スマホからご覧の方で改行がズレる点は、此の場を借りてお詫びしたい。私の友人がスマホを無くして助けを求めて来た。彼はスマホ一つで何でも完結するので、パソコンを持っておらず、Googleの行動履歴が自分では見れない。彼にパスワードを教えて貰い、Googleマップで見るとTOHOシネマズ二条に有ったので、遠隔でスマホの着信音を鳴らし、無事に手元に戻った。彼はその後予備の楽天スマホを購入(笑)。どんなにデジタルが進化してもユーザーが孤立したら終わり。情報に溢れた現代社会こそ、人と人との繋がりは大切。此のシリーズの人気の理由は「自分には助けてくれる人が居るのか?」孤独な生活の裏返しとして、シンプルに「絆」の大切さを問うてるからだと思う。

最近では珍しいお勉強に為るサイバー・スリラー。Googleの行動履歴、皆で確認しよう(笑)。
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