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search/#サーチ2(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

母と2人暮らしの女子高校生ジューン。ある日、恋人ケビンと旅行に行った母グレースが帰国予定を過ぎても戻って来ず、ジューンは不安になる。警察に相談しても埒が明かず、彼女は自らデジタルツールを駆使して母の捜索に乗り出すのだが…。

物語全てがパソコンの画面上で展開するという斬新なアイデアと巧みなストーリーテリングでヒットを記録したサスペンススリラー「search サーチ」の第2弾。
PC画面上で起きる出来事を劇場の大スクリーンで見るのは違和感があるだろうが、それは本作の緊張感と興奮度の前では些細なこと。
配信やTVモニターで見ればピタリとハマる、見惚れてしまう臨場感だ。

前作は行方不明の娘を探す父親の物語で、PCの前を離れた行動もあったため、何も全てPC画面上である必要はないのでは?と感じたものだが、本作の主人公は生まれた時から情報機器に触れて育ったデジタルネイティブ世代の女子高校生ジューン。
検索サイトや代行サービス、SNSなど使い慣れたサイトやアプリを駆使して母を捜索をする姿が、PCの前という設定を活かしている。

加えて、子ども以上大人未満である設定が絶妙にハマっている。
何だかんだ言っても、子どもにとって親は最も信頼できる頼れる存在。
頼れる人間が居なくなる生活への不安、また生まれた時からの信頼が揺らぐ不安。
そして真相を掴んだ後の自らの生命の危機と三重のサスペンスが押し寄せる。

前作と関連しない全く別物のストーリーなので、前作を見なくとも単体作品として楽しめる。
パワーアップした続編であり、捜索範囲もアメリカ国外へとスケールアップ。
低予算な上に面白い、脚本の勝利と言えるサスペンスの秀作である。

主人公のジューンがまだ幼い子どもだった頃、実の父・ジェームズが死亡。
新しい恋人ケビンに浮かれる母グレースにジューンは寂しさを感じ、かつての家族動画を見ては亡き父の思い出に浸っていた。

ジューンを友人のヘザーに任せ、グレイスは恋人ケビンとともに南米コロンビアへ旅立つ。
だが、突然2人の消息が不明に。
ジューンはパソコンの翻訳機能を利用し、グレースらが宿泊した現地のホテルと連絡を取る。
監視カメラの映像を探れば、グレースらがチェックアウトした時間が分かると考えたジューンは、現地の代行サービス業者のハビエルにグレース捜索の依頼する。

ハビエルにグレースの足取りを追ってもらう一方で、ジューンは反発してこれまで深く知ろうとはしなかったケビンという人物についても調べることにする。
その結果、ケビンとグレースはマッチングアプリを通じて知り合ったこと、そしてケビンが結婚詐欺師だということを突き止める。
ケビンから送られた母との旅行写真も、解析してみれば母とは違う別人とのものだった。

スマホの位置情報や監視カメラ、銀行の出入金記録など、人々の行動・生活がデジタル上で記録されている現代。
デジタル機器の操作に長けた世代の主人公が、次々と個人情報や秘密を暴き、捜査を進めて行くのが、ある意味痛快で逞しい。

母を見つけることは簡単と思われたが、一向に行方をつかむことができない。

そればかりか、実は薬物中毒者だった実の父親ジェームズから逃げるため、グレースは警察と司法取引を行い、過去の経歴を抹消していたことが母の使用したアプリから判明。
事実を確かめようと司法取引を行ったヘザーの職場に行くと、ヘザーは遺体で発見される。

その結果、グレースは「過去の情報がない謎多き人物」として、ジューンだけでなく多くの人に疑われることになる。
不可解な出来事はすぐさまSNSで拡散され、憶測ばかりが広がっていく。

果たして、グレースはケビンによってどこかに監禁されているのか?
それともグレースが再び過去を消そうと自ら身を隠したのか?
その時、コロンビアのケヴィンが国境付近で機動隊に射殺されてこの世を去り、一切の手掛かりが消えたかに見えた。
謎と不確かな情報に翻弄される少女ジューンの不安は計り知れない。

映画終盤で、母のアカウントに接続出来たジューンは、母の使用していたアプリから、父の死はグレースがついた嘘であり、実は刑務所に収監されていたことを掴む。

グレースの失踪は出所していたジェームズが仕掛けた罠であり、タクシードライバーに扮した彼はグレイスを誘拐し、かつての自宅に監禁していた。
そして絶妙なタイミングでジェームズがジューンの前に現れる。

そこからは怒涛の展開。
ジェームズは元々暴力的な性格。
グレースは娘ジューンを守るためにジェームズと決別する決意をし、名前と過去を捨てて生きてきたのだった。
一方、逮捕されたジェームズは服役中の刑務所でケビンと知り合い、グレースとジューンを再び我が物にすべく手を組んだというのが事の真相。

ジューンはジェームズに拉致され、動画に映っていた家に連れて行かれる。
グレースもジェームズに監禁されており、グレースはジューンを守るために必死の抵抗を試み、銃で撃たれる重傷を負いながらも、ガラスの破片をジェームスの首に突き刺す。

ジェームズは2人を再び監禁し、血を流しながら部屋を出ていくが絶命。
出血多量のグレースに命の危機が迫るなか、ジューンはジェームズが自分たち親子を監視するために密かに自宅に監視カメラを仕掛けていたことに気付く。

ジューンは自宅にスマホを置き忘れており、監視カメラを通じてスマホのAI「Siri」に呼びかけ通報。
程なくして通報を受けた警察が駆け付け、ジューンとグレースは無事救出される。

前作を見た人には斬新さの新鮮さはないだろうが、続編の在り方として、良いところをそのまま伸ばし、昔ながらの失踪事件の謎解きサスペンスをよりスタイリッシュに現代的にアップデートした印象。

ラストの防犯カメラ越しに主人公がSiriに話しかけて警察に通報するシーンを見て、誰か人間が助けに来ると予想していた自分の頭は古いのだと実感。

このSiriの使い方は上手い。
普段から自分も身を守るためにSiriを使い慣れておこうと思ったほど。
だが反面、ここまで個人情報というのは簡単に第三者の手に渡ってしまうものか?と、改めてネットの怖さも感じた。
パスワードは絶対に他人に悟られないものにしたほうが良いとも。

そんな全年代に向けた普遍的とは言えない、少しばかり浅い教訓が難点ではある。
また、普段からネットやPCに触れないシニア世代は展開の速さと操作に付いて行けないだろう。

しかしながら、良く出来た設定とストーリー展開は素晴らしい。
これぞ現代のサスペンスである。
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