カナダのケベック州北部の先住民居留区を舞台に、研究のために故郷に戻ったモントリオールの大学院生マニが、アルコール販売の自由化をめぐって密売人の女性や故郷の人々と対立する姿やその顛末を描いた、キャロリーヌ・モネ監督の長編デビュー作となるドラマ映画。
日本人には馴染みの薄い先住民と禁酒法の関係がテーマとなっている点は興味深いが、その分、直感的に理解しにくいとも言える。アメリカやカナダでは1900年代前半に禁酒法が導入されていたが、同化政策の一環として(加えて、先住民への偏見や差別から)先住民コミュニティにも禁酒法が適用された。その後、先住民の自治が認められるようになっても、禁酒法をめぐっては、アルコール依存、密売に関わる汚職や腐敗などから、コミュニティが二分化されてしまう。
そんな先住民コミュニティの姿やそこに感じる違和感が、故郷を離れてモントリオールで都市の生活に馴染んでいる主人公の視点から描かれている。題目にもなっている密売人と主人公の対立という側面が強調されたストーリーは、魅せるためにはやむを得ないかもしれないが、禁酒法の背後にある問題が隠されてしまっている点は残念である。
主人公のマニを演じたカウェナヘレ・デベリー・ジェイコブスの自然な演技は好感が持てる。彼女自身もモホーク族という先住民族である。消滅の危機にあるアルゴンキン語が出てくるのも貴重。