Jun潤

あのこを忘れてのJun潤のレビュー・感想・評価

あのこを忘れて(2021年製作の映画)
3.7
2023.03.15

予告を見て気になった作品。
いやー最近インディーズフィルムが熱い。
言い方あってるかわかりませんが泥臭く製作している感じも伝わってきて、作品そのものと合わせて二重の感動になるんですよね。

とある感染症に対する特効薬、その副作用は特定の人のことだけをすっぽり忘れてしまうということ。
誰が薬を飲み、誰のことを忘れたのか。
SF香る不思議なヒューマンドラマ。

これはすごい、いや色んな意味ですごい。
1時間に満たない尺の中で、誰のことを忘れたのかを考察させつつ、忘れることによる新たな幸せの享受と、一人の記憶から消えても誰かが覚えてさえいれば存在が続くということを、シンプルかつ濃密に描いていました。

登場人物も6人前後と必要最低限、セリフも説明臭くなく描写も一場面一場面が丁寧、そして展開自体はスピーディーなため、ショートフィルムでも成立しそう。
それを登場人物の深掘りに尺を割いているのだから、そりゃあ良いドラマにもなりますよって。

今作のキモの一つでもある忘れる相手について、設定や登場人物がシンプルだから、観ながらこうだろうなという予想もできますし、インディーズらしい荒削りさから予想できない難しさもあって、そのどちらもを咀嚼できる、描写と間隙の塩梅だったと思います。

そしてもう一つのキモでもある“忘れる”ということ。
二組の男女でもって、“忘れる”ということに対して否定的な考えと肯定的な考えの両方が描かれていました。
そのどちらについても、大切な人の記憶が自分の中から消えたとしても、それを前に進むために受け入れながら乗り越えていく過程を表現できていたと思います。
現実に置き換えても、今の自分が覚えていること、忘れていることから、得られるものが何かありそうだと感じさせてくれました。

いやーインディーズだと全然知らない俳優に新たな魅力を発見できることも楽しみの一つですね。
見た目に関してはどこかで見たことのあるような人たちを合わせたような印象を受けますし、演技についてはこんな風に演じられる人もいるのかと、インディーズ界隈や邦画界に希望を感じ取れますね。
Jun潤

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