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終わらない週末のumisodachiのレビュー・感想・評価

終わらない週末(2023年製作の映画)
3.8


全米図書賞にノミネートされたルマール・アラムの同名小説を映画化。Netflixオリジナル作品。

アマンダとクレイの夫婦は、息子と娘を連れてレンタルした郊外の別荘で週末を過ごすことにする。早速ビーチに向かったファミリーだったが、沖合にいた巨大なタンカーが猛スピードで向かってきて砂浜に乗り上げたのを目撃する。その後、テレビもスマホも通じなくなり外部の情報は遮断。とりあえず寝ようとしていたところ、家主だという親子が突然訪ねてきて……。

絶妙にありそうな展開が続くSFというかサスペンスというか。スマホもテレビもラジオも機能せず、衛星すら破壊されしてまったら我々はどうやって生きていくのだろうか?というシンプルだがリアルな恐怖を描いている。(昔はそうだったはずなんだけどさ)

次々と不可解な出来事が起こり、アマンダたちは追い詰められて混乱していく。陰謀論めいた推論や、身体を脅かすような事態も起こって窮地に立たされていく5人……なのだが、本作の肝は「謎解き」にはない。それがポイント。

宇宙人の侵略?自然災害?戦争?と、いろいろな可能性が考えられるがその答えを見つけていくようなタイプの作品ではなく、こういった状況になったときの情報社会の脆弱さや人間の行動や思考回路を描くことに重きを置いている。考察を促す構成なのは間違いないが、明らかな答えが設定されているとは考えにくい(ただし、一定の道筋は示される)。

アマンダは猜疑心が強く性悪説をベースにした人間で、クレイはその反対だ。彼らがなぜ夫婦として一緒になったのかがよくわからないくらい正反対の2人なので、謎の親子が現れたときの反応も真逆になる。混乱が生じてからも、ある者は「とどまった方が安全」と考え、ある者は「出ていった方が状況が開ける」と考える。そういった人間自体の描写に加えて、人種、経済的な階級、年齢といった社会的な要素から起こる齟齬や心の動きが結構丁寧に描かれていくのでかなり面白かった。

アマンダは猜疑心が強い上に、ほとんど無自覚な人種差別意識がある。また、自分の子どもは守り抜こうとするのに、他人の子どもに対しては酷く冷淡になったりもする。対して、クレイは能天気すぎて頼りにならないくせに「僕が守る」と根拠のない宣言を頻繁にしてしまう。きわめて滑稽だ。大人たちの弱さや滑稽さと、子どもたちの混乱や葛藤や決意が良いバランスで配置されていて退屈しない。

「鹿は神の使いなんだって」というセリフを序盤に入れているなど、考察のサポートをするような要素が多すぎるのはちょっとマイナス(それぞれの鹿に対する態度の違いが終盤で大きな意味を持つことになる)。もっと状況がまったくわからないという内容にした方がさらにスリリングで良かったのではないかと感じた。観客が消化不良を起こすことに対して怯えすぎでは?あと、飛行機が落ちるシーンやタンカーが突っ込んでくるシーンみたいなダイナミックな映像をもう少し見たかったかな。




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