Rita

マエストロ:その音楽と愛とのRitaのレビュー・感想・評価

4.8
偉大な愛と絆の物語。

「ウエスト・サイド物語」の音楽など、世界的に知られるアメリカのクラシック音楽界を先導してきた音楽家レナード・バーンスタイン。妻であるフェリシアと共に歩んだ生涯を描いた愛の物語。

If the summer doesn't sing in you,then nothing sing in you.And if nothing sings in you,then you can't make music.

音楽は素晴らしい。人は音楽を聴いて感動し、喜び、心を動かされる。好きな音楽を聴く度に何度も高鳴る気持ちになるのは本当に素敵なこと。レナードとフェリシアの突然のミュージカル要素には心躍らされる。

現実よりも幻想的で、夫婦の仲を明確ではない、ぼんやりと撮しているようだった。幻想的なモノクロームの夢のような時間からカラーになり急に現実味を帯びた話に変わるのだ。伝記映画でもバーンスタインを妻や娘たちからの視点で撮っているのが珍しいと思った。彼が手掛けた音楽よりも家族の愛と夫婦間を描いた作品でした。

ロマンチックな出逢い。レナード・バーンスタインは作曲家でありピアニスト、お喋りで面白い魅力的な人物に映る。しかし、レナードが同性愛者であることに薄々フェリシアは気づいていた。それでも彼と結婚したのは何故かという問いに、彼女は愛していたからと答えるだろう。自分の選択に責任を持つ覚悟をしていたが時が経つにつれて、愛人のもとに夫が離れていくことに精神的に堪えられなくなっていく。とても複雑で夫婦の仲が壊れていく様子が見ていてつらい。

感謝祭での二人の爆発的な口論のリアルさ、そして窓の外をパレードのスヌーピーの巨大な風船が通過していく光景がとても鮮明に残る。夫婦の関係が悪く心苦しい場面が続いてきた。しかし、フェリシアがレナードのイーリー大聖堂での演奏を聴きに来て、初めて出会った頃のような愛情を取り戻すシーン。初めて映画を観て息ができなくなるほど感動しました。全身が痺れる感覚、頭と目が痛くなるほど涙が止まりませんでした。そして間もなく別れが訪れる不幸な知らせ。心を大きく揺さ振る大傑作。

愛しあって結婚した二人。闇を抱えながらも、どんなに辛く挫折しても支え合うことに身を捧げた。この映画から伝わるのはとてつもなく大きな愛情と、レナードとフェリシアだけの強い絆だ。素晴らしい愛の物語。とてもパワフルで情熱的な今までにない感動的な作品だった。

ブラッドリー・クーパーとレナード・バーンスタインが凄く似ていることに驚いた。クーパーは6分の演奏の為に6年も指揮の練習をしていたそうだ。そのイーリー大聖堂でロンドン交響楽団の指揮を執ったシーンは最大の見どころとなっている。今作に掛けるクーパーの強いこだわりがこんなにも素敵な作品に仕上がっていて間違いなく彼は立派な監督です。

ラストにレナード・バーンスタイン本人が指揮を執っている演奏の映像が本当に良かった。


"A work of art does not answer questions,it provokes;and its essential meaning is in the tension between the contradictory answers."
LEONARD BERNSTEIN
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