Masato

ニモーナのMasatoのレビュー・感想・評価

ニモーナ(2023年製作の映画)
4.5

悪者

クロエちゃんが主演の声を務めたネトフリオリジナルのアニメーション作品。濡れ衣を着せられた騎士と除け者にされた謎の少女ニモーナがゆく潔白を証明するための奔走を描く。

凄まじくガツンと来る物語だった。正義と悪という概念を根本から覆し見直させてくれる。正義と悪の対立構造など如何様にも作れてしまう恐怖、差別や偏見を利用して悪とレッテル貼りできてしまう恐怖、何をもってして正義なのか?悪なのか?歴史、権威、全てを疑うこと、そして権力に惑わされずに自分の善き心を貫くことの大切さを教えてくれる。さすれば自ずと何をすべきか分かってくる。アダム・マッケイもViceの時言ってたね「日本人よ権力を疑え」って。

マイノリティの生きづらさを見事ファンタジーの世界観に落とし込めてるのが素晴らしい。異質なものに対する偏見や排除は往年の傑作アニメ「ヒックとドラゴン」、「ウルフウォーカー」などでも描かれてきたが、本作では誰からも愛されないどころか殺意を向けられ続けてきた生きづらさを切実に語る描写は生々しすぎて、病んでいる人が見るほど良くも悪くもキツく感じる。自殺まで描いていくから心臓バクバクした。上記2作品はもう少し俯瞰したところを描いていたものが、当事者のメンタルヘルスをまざまざと描いていくところが今までにない部分だった。

悪者なんて誰かがそう決めただけだ。誰かの悪者なだけだ。君は君なんだと優しく語りかけてくれる。病める大人から純粋無垢な子どもまで、色んな人が救われる映画だった。あまりにも凄惨すぎる社会とメンタルヘルスにまつわるセルフケアの物語だったのは本当に現代ならでは。ありがとう。

クロエちゃんをキャスティングしたのがよく分かるくらいにパンキッシュなニモーナ。あの曲が流れた瞬間にこれはクロエちゃんじゃないとアカンとなった。ユーモアがそこらかしこに効いていてとにかく良かった。ニモーナの顔芸最高。

アンナプルナって近未来系好きだよね。ゲーム部門そればっかしなきがする。Strayとか今度のブレランとか。

あとさ、他レビューでLGBT入れすぎとか、オッサンの恋愛は子どもに但し書きしろとか、この映画見て何学んだの?こんなの当たり前の恋愛じゃん。何がいけないの?異性愛が当たり前だと思ってんの?全てを疑えよ。
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