ノラネコの呑んで観るシネマ

ニモーナのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ニモーナ(2023年製作の映画)
4.7
Netflix。
端的に言って傑作だ。
女王殺しの濡れ衣を着せられた騎士は、どんなものにも化けられ破壊願望を持つ変身人間の少女とバディを組み、事件の真相を探りはじめる。
キャラクターは中世ファンタジーみたいなのに、舞台はSFチックな未来都市という独特の世界観。
キャラクターデザインはVCのリズ・アーメットとクロエちゃんに寄せられ、2D調で描かれたビジュアルは未見性がある。
人々はこの世界の秩序を作り出した、千年前の伝説の勇者の言葉を盲信したまま。
王国の騎士は世襲制で、彼らの“敵“は封印され誰も見たことの無いモンスター。
主人公は初めての庶民出身の騎士になるはずが、罠に嵌められる。
彼が戦わなくてはならないのはモンスターではなく、社会の中にある硬直した価値観。
これは長年信じられてきた“当たり前”が変わる瞬間を描いた物語で、その意味では「ヒックとドラゴン」に近い。
クロエちゃん演じるタイトルロールの、鬱屈した異形の者の悲しみも、物語の情感をアップし、非常に魅力的なキャラクターになっている。
これ、本来はディズニーに買収されて閉鎖されたFOX傘下のブルースカイスタジオの制作で、アンナプルナが引き継いで完成させた作品。
買収当時は未完の状態だったとは言え、ディズニーは自社作品にはいない、新しいタイプのヒロインをみすみす手放してしまった訳だ。
クライマックの怪獣パニックも含め、アニメーション技法を生かし切った作品で、できれば劇場で観たかったクオリティ。
素晴らしい仕上がりです。
ブログ記事:
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