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ニモーナのマのレビュー・感想・評価

ニモーナ(2023年製作の映画)
4.9
ゲイフォビア、トランスフォビア、ゼノフォビア、言い出したらキリがないけどそれらが無限に溢れる絶望的な社会の中で ただそれを的確に見つめ、その絶望を味わってきた/味わいながらも作品を描き、丁寧に切実に苦しみや苦しんでる人々を救う/救おうとする 勿論、誰でも自分を守ろうとすれば途端に不寛容になってしまうと理解した上で... 凄い映画だ。英語圏のアニメーション作品の中で「普遍的なテーマ」として擦られているテンプレートを逆利用的に乗りこなしてる印象。

苦しんできた人々は苦しめてきた人々に何かを捧げなければ受け入れてもらえないのか、という辛い話に見えてしまうかもしれないけど、そうとは言えないのは(登場人物としても作品としても)"ニモーナ"がした事は物語の「書き直し」だから。最近の様々な作品に共通するけど、自分達が変わる(適応させられる)のでは無く 周りを変えてしまう力強さが本当に好き。

でも同時に、この地獄みたいな社会はどう頑張っても、誰がどれだけ死のうとも変わらない 今起きている事を見ればわかる通り、多分人類は永遠に「モンスター」を規定して殺し続ける。"自分と違うものを剣で貫けば英雄になれると教えられてる"という台詞がどれだけ強烈か...

理想は理想でしかないことも充分に理解されている、だから安易にフィクションの中でしか達成し得ないハッピーエンドを描ききることは無い 寧ろ手のひらを返す民衆の描写はそのまんま皮肉なんじゃないか とすら思う 悲しいけど、それでもこの映画は人々の居場所になれるし、人々を癒せる。それだけでも充分だと思う。やるべき事は映画の世界だけじゃなく、現実にこそあることを理解してる。NDスティーブンソンやリズ・アーメッド、制作陣の事はずっと応援したい。

もはや当たり前だけど、決して今まで何度も擦られてきた悲劇的な話としては終わらせない気持ちいいラストも良い。めちゃ粋だね。さりげなくプライドカラーが出てくるのも素晴らしい 普遍的なメッセージを語りながらもテーマをフワッとさせ過ぎないバランス しょうもない冷笑へのパンチとしても。兎に角、今こういう作品が作り出されることに、没にされかけながらも公開できたことに純粋に感動する。観れてよかった

アニメーション表現は言うまでもなく全部良い。戦闘、変身、終盤の怪獣映画的な表現は勿論、"暴れようとするニモーナ→それを抑えるバリスター"をテンポ良く魅せる前半だけでも永遠に楽しめる。モノの動かし方の上手さ(投げたものがどこに飛んでどうなるか とか)はロードミラーの作品群とも重なる。
笑える所もきっちり笑える。キック・アスの(直球な)オマージュも嬉しい。


脚本より
NIMONA DOESN'T HURT ANYONE
SHE DOESN'T BURN ANYTHING DOWN
マ