KingKazukiManji

ニモーナのKingKazukiManjiのレビュー・感想・評価

ニモーナ(2023年製作の映画)
5.0
もうまずは、サイバーパンク的な中世ヨーロッパという最高にアガる世界観に心を奪われた。

王道なストーリーで、目新しさはなく、先の展開も多少なりとも読めてくる所もあったが、それでもマジョリティに立ち向かうマイノリティというのは観ていて心地よいものだし、何よりキャラクターが生き生きしていて楽しかった。

本作の素晴らしい所は多様性の描写が恩着せがましくなく、自然であることにある。例えばニモーナは、とても中性的で、両儀的で、クィアなキャラクターとして描かれていて、とても好感が持てた。ニモーナがバリスターの相棒として描かれていたのがそうだろう。これがたちまち日本のアニメになるとボーイ・ミーツ・ガールになって、ニモーナはヒロインに成り下がってしまう。やはり決められた枠組みに押し込められると、キャラクターのリアリティが失われていく気がしてならない。

本作はタイトルにニモーナとあり、エンドクレジットの名前も1番初めに来るので、彼女が主人公であるのだろうが、物語を観ていくとバリスターを主人公として観れるようにもなってくる。この両義性がとても良かった。こういう日本の量産型アニメにはない価値観の作品は、やっぱり面白い。

最近何かと話題になっているディズニーとは一線を画していて、プロットの枠組みに押し込めてないのが、アニメーションとしてのレベルの違いを見せつけてくれた。特に悪役を悪役としてのステレオタイプにはめるのではなく、悪役を倒すことを目的としない着地点には脱帽させられた。

アニメーションの作画レベルが凡庸だったという意見をチラホラ目にしたが、アニメーションらしくて心地よく、まったく気にはならなかった。個人的には日本のアニメへのオマージュが多々見受けられて良かった。いちいちディズニーの大作と比べるのも違うし、作画至上主義でしかアニメを観ることのできないような風潮を作ってしまった日本のアニメ業界は恥じるべきだと感じた。

ニモーナのようなアニメーションとしての心地良さと、子供から見れる作品における文学性の高さを評価して、是非ともオスカーを取って欲しいものである。しかしながら、アメリカにおけるアニメーションの快楽という点では日本のアニメーションの新鮮さが勝るのもまた事実で、難解ではあるが、文学性も有してる君たちはどう生きるかが受賞する可能性が1番高いだろう。スパイダーバースもマイエレメントもクオリティという点では申し分ないのだろうが、如何せんノミネート作品の中におけるジブリが有する唯一無二のアニメーション表現が強すぎる気がする。
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