豚肉丸

Skinamarink(原題)の豚肉丸のレビュー・感想・評価

Skinamarink(原題)(2022年製作の映画)
4.5
子供達が消えた両親を探して全てのドアが消えた家の中を歩き回るお話

アンディ・ウォーホルやギー・ドゥボール的実験映画の系譜を継いだホラー映画。100分間殆ど何も起こらず、固定ショットで夜の家の映像を映すだけというかなり実験的な手法を取りながらも、真っ当で恐ろしいホラー映画に仕上がっていた。

近年、80/90年代のカルチャーのノスタルジー的消費が流行している。リミナルスペースやヴェイパーウェイヴなど、80/90年代の頃に幼少期を過ごした人達が「あの頃」に思いを馳せて様々な創作物が作られているが、同時にノスタルジー的消費にはあの頃に感じた得体の知れない恐怖の感情も付き纏っている。その最たる例が「何も無いはずなのに何故か怖い」というリミナルスペースミームであり、『SKINAMARINK』もまたそれに当てはまる映画であった。
95年を舞台にした本作は、至る所で「ノスタルジー」のアイテムが現れる。レゴブロック、ブラウン管テレビ、カートゥーンアニメなど。それらのアイテムは幼少期の頃を思い起こさせるきっかけとして用いられ、それによって子供の頃に感じていた恐怖の感情を想起させられるようになる。4歳、5歳ぐらいの頃に夜中の家を歩いていた時のあの感覚。幽霊とかそういうものではなく、純粋に「誰も居ない暗い空間」が恐ろしかったあの感覚。『SKINAMARINK』は実験的な手法を用いることによって、あの時に感じていた恐怖を再現するのに見事成功していた。つまり普通のホラー映画と違って滅茶苦茶恐ろしいし本当に怖い。マジで。
画面全体にかかったノイズも付きっぱなしのブラウン管テレビも地味に見える人影も何もかも恐ろしいし、恐怖が絶え間なく続くから本当に怖い。久しぶりに映画を見て恐怖に怯えた...

あと、少し良かったのが固定ショットがそこまで長くない点。大抵この手の映画って何も起きない固定ショットを5分ぐらい流すものだが、本作は意外とパンパンショットが切り替わり、映像のアクションもそれなりに多いため、エンタメ性はほぼ無いながらもエンタメとして仕上げようとしている気力は感じたし、そのおかげか退屈さはそこまで感じなかった。
ただ日本でも海外でも目に見えて賛否両論で、間違いなく好き嫌いハッキリ分かれる映画だとは思う。個人的にはかなり良かったけど。

だけど最後のジャンプスケアは反則だろ!その次のショットがゾッとするくらいに恐ろしかったからジャンプスケアを使う意味は納得するけど、それにしても反則だろ!!
豚肉丸

豚肉丸