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Skinamarink(原題)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

Skinamarink(原題)(2022年製作の映画)
4.0
【無が映っている怖さ】
ゴダールは『アワーミュージック』の中で、言葉は分断を呼ぶからイメージが必要だけれども、イメージするためには無が必要であると理論立てていたが、その理論をホラーに落とし込んだような作品が登場した。それが『SKINAMARINK』だ。以前、Twitterで話題になっていた作品で気になっていたところ、MUBIで配信されていたので観た。

本作は、語弊を恐れずにいえば、ほとんど何も映らないホラーである。『ポルターガイスト』や『ヴィデオドローム』を彷彿とさせる、夜の部屋を照らすブラウン管の光で捉えたような画が並べられていく。どれも奇妙なショットで撮られており、天井だったり、わずかに廊下が見える状況だったりと、明確に空間を捉えることを回避している。

映画を観ていくと、どうやら2人の子どもがいるらしく出口を探している。だが、トイレが消え、扉が消え、窓が消えていく。出口なき部屋の中を彷徨っていることが分かる。微かな声で警察を呼ぶ、別のショットでは血が飛び散るような様子が映し出される。静かながら、異様なことが起こっており、それが独特な怖さを引き起こす。

脳裏のイメージだけで恐怖を持続させていく本作は2020年代最重要なホラーの一本といえよう。日本公開希望だ。
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