からかす

沈黙の艦隊のからかすのレビュー・感想・評価

沈黙の艦隊(2023年製作の映画)
3.5
原作既読。
原作「沈黙の艦隊」の魅力は色々あるのだが
大きくは二つ。
一つは天才艦長海江田と新型原潜やまとが
あらゆる難敵に対し縦横無尽に立ち回る潜水艦アクション。
もう一つは人・国・宗教が持つありとあらゆる
イデオロギーを叩きつけ合う苛烈な政治闘争劇。
特に二つ目が実写化にあたっては
相当高いハードルなんじゃないかという事前の予想。

結論から言えば本作相当頑張っている。
もちろん全32巻の原作を1本の映画にするのではなく
序盤のエピソードを取り扱っている。
また映画としては潜水艦アクションに振り切っていて
その潜水艦アクションが見応え十分。
音響のみを頼りに双方撃ち合い
いかに海中を自由に動けるかで勝負が決まる感じは
原作の雰囲気そのままだし映画としてもカッコいい。
従来の潜水艦映画ほど狭隘で息詰まる感じはないが
そこはやまとを追う側の旧型潜水艦たつなみがカバー。

また、役者陣も相当頑張っている。
特に主人公海江田を演じる大沢たかお。
そもそもこの海江田という男も実写化のハードル。
冷静な天才艦長であり
殉教者のような神々しさがあり
子供のような無邪気さを兼ね備えた男であり
そんな人間を実写でどうするのかと思っていたが
どちらかというと天才艦長性をフィーチャーした形で
かなり頑張っているという印象。
また対するライバルポジション深町を演じる玉木宏。
こちらは原作でも特に漫画的なキャラだったが
実写化にあたり漫画と現実を擦り合わせした形で
こちらもかなり頑張っている。
あと橋爪功ってあんなに滑舌悪かったっけ?

逆に政治闘争劇という側面はかなりオミットされている。
そもそも原作でもまだまだ政治闘争劇が激化する前の
エピソードなのでしょうがないのだが
こちらは正直かなり緩めの作りで
もっとバッサリ切り落としても良かったかもという印象。
まあそうすると「沈黙の艦隊」らしさが無くなるので
難しいところなのだが。

よくよく考えればこれは平成「ゴジラ」のような映画。
海からやってきたゴジラが大暴れする中
茶番みたいな政治・軍事会議をして
ゴジラとの戦いシーンはきっちり描いて
ゴジラは海へ去っていく…というような怪獣映画だったのかも。
とにもかくにも続編があるなら観たいと思わせてくれる。
からかす

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