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沈黙の艦隊のメッチのレビュー・感想・評価

沈黙の艦隊(2023年製作の映画)
2.6
核を搭載しているか不明の脅威の原潜捕獲劇の実写化。しかし、なぜ今実写化したのか?

原作の漫画が連載された当時では、技術的にも制作費で考えても実写化は不可能だったでしょう。でも、30年経った現代では、技術も制作会社も問題なく実写化しただけあってハリウッド映画並み。戦闘シーンなど迫力があった。
ところが、原作の前編までを実写映像化しているため、お話の流れや区切り方など見ても、どうしても規模の大きい連続ドラマの1話を観ていたような気がしていたのは否めません。

ただ、作中に「鯨」というワードが強調されていたのは気になりました。なぜ「鯨」なのか?そういえば、ペリー提督が日本と日米和親条約を結ぶきっかけは「鯨油」のためでしたけど、そういうことを連想させるためなのでしょうか?
確かにそう考えると、1854年に日米和親条約のきっかけは「鯨油」。1941年に「原油」を巡って日本が戦争を起こし、1945年に「核」による2つの原爆が日本に落とされ降伏。日米の歴史の変化点には、エネルギーが関わっているし、日米関係の起源を象徴させるものが「鯨」なのでしょう。
なので、「鯨」を強調することは、日米関係を改めて考えさせるためのワードなのかと思いました。

しかし、原作が連載されてから30年経ってから、なぜ実写化したのか?という製作した意図が弱かったと思います。「核を通じて平和とは何か?」をテーマに、アメリカやソ連(現ロシア)が登場するため実写化不可能と言われながらも、30年の時を経てようやく実写化ができた本作。それと比較して、30年前の作品の続編を映画がサブスクの影響で、映画館での上映が危ぶまれている現代に公開した『トップガン マーベリック』。どちらも真剣に制作されている熱量は伝わりますが、作品から伝わる「今この時代だからこそ考えてほしい」というメッセージがあったかというと本作は弱かった気がします。
よって、そこまで考えずに「核」を取り入れたエンターテイメントとして観る。それが本作なのでしょう。
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