ぶみ

私たちの声のぶみのレビュー・感想・評価

私たちの声(2022年製作の映画)
3.0
世界のどこかに、「私」がいる。

7本の作品によるイタリア、インド、アメリカ、日本製作のオムニバス。
女性監督、女性の主人公による7つの物語を描く。
物語は、タラジ・P・ヘンソン監督、ジェニファー・ハドソン主演『ペプシとキム』、キャサリン・ハードウィック監督、マーシャ・ゲイ・ハーデン、カーラ・デルヴィーニュ主演『無限の思いやり』、ルシア・プエンソ監督、エヴァ・ロンゴリア主演『帰郷』、呉美保監督、杏主演『私の一週間』、マリア・ソーレ・トニャッツィ監督、マルゲリータ・ブイ主演『声なきサイン』、リーナ・ヤーダヴ監督、ジャクリーン・フェルナンデス主演『シェアライド』、ルチア・ブルゲローニ、シルヴィア・カロッビオ監督『アリア』の7本のショートムービーで構成されており、特にそれぞれの作品に繋がりはなく、独立したものになっている。
『ペプシとキム』は薬物使用、『無限の思いやり』はコロナ禍における路上生活者をテーマとしたいずれも実話ベース、『帰郷』は音信不通だった親族の死をきっかけとした帰郷、『私の一週間』は二人のこどもを育てる母親の日常、『声なきサイン』は治療のために犬を連れてきた夫婦の違和感に気づく獣医、『シェアライド』はトランスジェンダー、そしてラストの『アリア』ではアニメーションと、内容は多岐にわたっており、それぞれが、しっかりと結末まで作りこまれていることから、余韻がまだある内に次の作品が始まってしまうため、頭の切り替えが必要となった次第。
中でも、気に入ったのは、サスペンス仕立てとなっている『声なきサイン』と、母親の忙しさを体現した杏の演技が素晴らしい『私の一週間』であり、とりわけ、後者における育児、家事等がマルチタスクとして日々進行していく母親の忙しさたるや、いざ映像化されると身につまされるもので、一見の価値あり。
反面、ラストを飾ったアニメ『アリア』が、それまでの作品が、テーマが明確になっていたのに対し、少々観念的な内容であったため、消化不良な感じで終わってしまったのが残念なところ。
女性監督による女性主人公で作られた物語は、おしなべてクオリティが高く、性別関係なく、共感できる部分を見出すことができるであろうとともに、タイトルのように、具体的に声を出さなくとも、メッセージが伝わってきた一作。

あなた、キャットウーマン?
ぶみ

ぶみ