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コット、はじまりの夏のtaiaのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
4.0
時間と体力的に今日観るか少し迷っていたのですが、重い腰を上げて良かった。
とても良い作品でした。

自然の中目的もわからず走る少女の姿をカメラに収めた本作の予告編とポスターは、「青春モノなぜか走るシーン入れがち」と言われる邦画の宣伝を見慣れた私たちにはあまり個性的ではないかもしれないけれど、割りとユニークなもののつもりで作られたのではないかと思った。なぜなら走ることが彼女にとってとても重要な意味を持つから。

主人公コットはきょうだいの多い家族のおそらく下から二人目が三人目で、はっきり言ってどこにも馴染めていない。
父親は酪農の仕事をせず賭け事に明け暮れ、家事を全て母親に任せている。おそらく子供を無計画に作ることに何ひとつ罪悪感を抱いていない父親のせいで、母親は6人目の子供を妊娠しており手一杯の状態である。そんな環境下で育った上の姉妹たちもおそらく自分を育てるので手一杯で、誰もコットの面倒は見てくれない。
学校に行っても居場所は無く、いないものとされるか変わり者扱い。そんな息苦しい学校からたまりかねて冒頭コットは逃げ出してしまう。学校から、カメラから、校庭を端から端まで走り抜けて。

言動の節々から父親が最低なことは伝わってくるが、母親も同じく最低だとは断言しづらい。確かに彼女の愛情とケアの欠如が静かなコット(原題は"The Quiet Girl")を作り出しているが、一緒に家族を支えてくれると思った夫が仕事もせず金を外で使い果たし家のことを何一つしてくれないとなったら自分のケアだってままならないだろう。

そして二人はとうとう、夏休みの間だけという条件でいとこ夫婦にコットを預けてしまう。
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