真昼の幽霊

コット、はじまりの夏の真昼の幽霊のレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
5.0
まあこんな感じだろうな、と思った映画が想像を遥かに超えていい作品で、「ナメんな」とばかりにぶん殴られる。これがあるから映画はやめられない。

話自体はとてもシンプルだが、主人公を演じる子役の透明感と、彼女が親戚の家に預けられてからの丁寧な暮らしぶり(実際の家での粗雑で暗い暮らしぶりとの対比がエグい)の描写があまりに素晴らしく、前半で既におっさん半泣きである。

預けられた家のおっさんには最初戸惑いもあったと思う。相手は女の子だし過去の経験もあるし、ある意味では妻以上に深く傷ついている。彼の人物像を「ああ、言いすぎた」というセリフなしにワンショットで見せる妙味。そしてそのあとの行動にもセリフはない。英題にあるQUIETはGIRLだけにかかっているわけではないのだ。

そしてあのラストである。もちろんコットの行動は予想がつく。そりゃそうだろうと思う。でもそのあとにあのロング(ロングなのがミソ)ショットを挟んでからクロースショットであのセリフを言わせるセンス、これはヤバすぎる。

このコルム・バレードという監督、要注目だ。そしてもちろんコットを演じたキャサリン・クリンチの今後にも期待がかかる。

早くも2024年のベスト10候補に確実に入りそうな一本だ。あ、音楽もいいです!Apple Musicにないけど。
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