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コット、はじまりの夏のdm10foreverのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
4.3
【常若の国】

とても静かで、穏やかで、だけどそこには確かに「愛」があって。

「過剰なキャラクター造詣」や「過激な演出」「不必要な出来事(事件)」などを可能な限り削ぎ落し、本当に素朴な登場人物たちと美しい風景が持つ「素材の良さ」を十分に堪能する作品。

決して何も起こらないわけではないけど、それでも他の映画と比べれば圧倒的に絵的な起伏は少ない部類の作品と言えるのではないだろうか。
しかし、同時に映画を観ながらその空間(場面)に漂う行間を読むかのような、どこか小説を読んでいるかのような味わいすら感じる。

学校にも、家にも居場所がないコットと、最愛の子供を失った瞬間から時が止まってしまった夫婦。
彼らの触れ合いは凍っていた時間をゆっくりと溶かすかのようにお互いの心を解していく。

永遠に続くことのない時間だからこそ、この一瞬一瞬がいとおしく感じる。

「黙っていることは悪い事ではない。皆、沈黙の機会を失って、そして多くを失ってしまうんだ」

ただ間を繋ぐだけの空虚な言葉なら話す必要はない。
話をしなくても、傍にいて相手の事を想うだけで十分伝わることもある。

最近クセの強い映画を見続けたせいか、ちょっと感覚がバグり気味のdmでしたが、この作品を観たお陰でいい感じでチューニングできました。

あと・・・ネタバレって程でもありませんが、残しておきたい気持ちもあるので、フィルターかけてコメ欄に書きます。
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