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コット、はじまりの夏のsymaxのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
3.8
"可哀想に…本当の子だったら、よそに預けたりなんてしないのに…"

9歳の少女コットは孤独でした…

学校に彼女の居場所はなく…家族の中でも浮いた存在に…必然的に寡黙な少女となったコットを周囲は何処か疎ましい目で見るようになっていたのでした。

コットの母親が間もなく出産する事で、夏休みに遠く離れた親戚夫婦に預けられる事となったコット…初めは戸惑い、ぎこちなかった彼女の態度は、キンセラ夫妻との静かで穏やかな生活を通じて、コットの心は癒されていく…ようやく、自分の居場所を見つけた…そう感じたコットでしたが…

何か特別な事がある訳ではありません。

心を閉ざし、寡黙な9歳の少女が何処までも優しい親戚夫婦と一夏を過ごすことでかけがえのない居場所を見つけていく、どこまでも優しいお話なのですが、私的には、子供の目線から見た"父親"の物語なのでは?と感じた次第です。

コットの実父ダンは徹頭徹尾クズ男のように描かれ一方、親戚のショーンも無愛想でとっつきにくく、コットとも最初はギクシャク…でもショーンは愛情深く、優しい人…ただ不器用なので素直に表現出来ないのでしょうね。

それとなく、お菓子をコットの前に置いたり、町に買い物に出て、"甘やかせる為に連れてきた"って言ったり…

ショーンの妻アイリンは、コットと初対面からずっと優しく、コットとの関係性は変わらないのですが、ショーンとコットの関係性は劇的に変わっていき、三人は本物の家族のような関係になっていくのです…

だからこそ、ラストがああいう構図となり、コットが繰り返すあのセリフに涙するのです…
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