個人的にはこの時期、立て続けに「普通じゃない」設定の映画を鑑賞して(ボー、ヴェルクマイスター4k …)ちょっと朦朧と(笑)していたところに、この『コット、はじまりの夏』に出会って救われた気になった…。
物静かな中にも愛が満ちている物語という感じで、奇を衒ったところは一切ないのに最後まで画面に惹きつけられてしまった。
久しぶりに無条件で優しい気持ちにさせてくれる作品。
主人公の少女・コットに初めて、人の優しさみたいなものを教えてくれる、親戚夫婦のショーンとアイリン。
彼らのその優しさは、どこから生まれているものなのだろう。
コットの両親は、それぞれの都合で、まったくコットに関心を示さない(示せない…か。)
けれど、もしかしたらここに登場する誰も、そこにはそれなりの事情があるのかもしれない。
「優しさ」
でも、それがずっと空振りしていたら?
ずっと報われなかったら?
もしかしたら非情に見えるコットの父親も、貧困から… 生い立ちによる境遇から… ずっと報われないままで、こうなってしまったのかもしれない。
それでも、関心を持ってあげること。
報われなくても気づかってあげること。
そこから、「優しさ」というものって始まるのかもしれない。
コットのそばに黙ってそっとビスケットを置いてあげるショーン。
優しくコットの髪を梳いてあげるアイリン。
ラストの、二人の乗った車を追いかけていくコットに、素敵な未来が待っていると信じてやまない。