柿トマト

アダマン号に乗っての柿トマトのレビュー・感想・評価

アダマン号に乗って(2022年製作の映画)
3.0
精神疾患を患った人々が集うデイケアセンター「アダマン号」を撮影したドキュメンタリー。自由な雰囲気の中、患者たちはワークショップを楽しんだり、カフェ店員として働いたりしているが、介護者との壁がないため、まるで仲間同士のように自由に交流している。このようなゆったりとしたドキュメンタリー作品では、劇的な展開はないものの、観客は常に考え、咀嚼して見ることが求められる。そういった意味で、試聴カロリーが高い作品だ。

ただし、この作品は一部の観客には不親切に映るかもしれない。なぜなら、劇的な出来事やストーリーがなく、あくまで観る人自身が考えをめぐらせる必要があるからだ。しかし、このようなドキュメンタリーが刺さる人には刺さることは間違いない。

自由が認められているため、患者たちは時折寂しそうな表情を見せるが、この点が作品のどうしようのない感情を増幅させている。彼らは自由ではあるが、健常者と同じような日常を送るわけではない。しかし、彼らが集い、互いを認め合い、情報を共有しながら生きている様子は、真の意味での平和な世界を思わせる。その最後の場所がアダマン号である。
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