このレビューはネタバレを含みます
とてもささやかな映画だ。スクリーンで描かれてる膨大な時間の厚みに終始圧倒された。
子供の頃だけを知っていて、大人になってから会うとその人は別人に思える。人間としては1人であっても会わなかった時間の大きさによって、それは“再会”というより“新しい出会い”に近づく。そんな雰囲気が一貫している。
今作において重要な“イニョン”という言葉。過去と結びつけたり、未来に期待したりすることで、関係性に運命という意味づけをする。それは現在に関係が生きているからこそできることなんだ、と今作を観て強く思った。
夫と初恋の人が顔を合わせる終盤のシーンで、それは初対面のはずなのに、再会と言ってしまうような強引さが、私はすごく好きだった。ただ見つめあって別れるラストシーンは本当に素晴らしく、感動した。
君は僕のわからない言語で夢を見ている、も語るシーンでは、伊藤比呂美の詩を想起した。