あべ

パスト ライブス/再会のあべのネタバレレビュー・内容・結末

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

私が映画を見る中でとても好きな瞬間が、役者の顔に一瞬の内にありとあらゆる感情がごちゃ混ぜになった表情が写るところなのですが、あのラストシーンで泣いてしまいました。
あまりに多くを語る沈黙。
とても、とても一言で表すことはできない。複雑に絡まっていたり、幾重にも重なっているような、ありとあらゆる想い。あの時の少女から変わってしまったこと。彼と一緒にいない選択をしたことで今の自分がいること。
自分が失ってしまった韓国人らしさを持っている、というのもすごい象徴的で、彼はノラのIFの姿で、だからこそまるで違う人生を彼に投影してしまう。
堰を切ったように泣き始める姿を見て同じ様に泣きました。

あの時こうしていたら...?というwhat if、でも決して後悔だけを描いてるわけではない。数々の選択をしてきたからこそ、選ばなかった選択をしたからこそ、今の自分が形成されている。この人生のあまりの途方もない存在感に打ちのめされてしまう。
優しい、優しいジョン・マガロのあの、全てを理解しているかのような佇まい...!
居てほしい時に居てくれるってこういうことよね。

流れる音楽もまた本当に素晴らしくて、Grizzly Bearというバンドの2人なんだな。聴いてみよう。ラストシーンで流れる曲の題名「See You」...。
泣いちゃう。

抑制された演出に淡い色味が素敵で確かなショットもあり、そして何より激情的ではなく安っぽくもない愛がとても愛おしく、お互いを人として尊重しようとする優しさに溢れていて。またこの監督の作品を見てみたいなと思いました。
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