まえじま

パスト ライブス/再会のまえじまのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.6
2024年32本目。

観終わった後は突出したものはないように感じたが、ジワジワ評価が上がる心に残る作品でした。

この映画は異国に移住してしまった初恋の人を想い続け、12年後にスカイプで再会し、更にその12年後にその国まで会いに行くという話。

同じような話で菅田将暉と小松菜奈の「糸」という映画があったが、全くもって違って現実的なのが今作。運命の赤い糸を辿って結婚まで行くのが「よくある」恋愛映画なのだが、今作はその希望をズッタズタに刺していくほど恐ろしく現実的だ。

「別の人生で一緒にやりたかった…ランドリーと税金を…」

自分が大好きな「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」でのキー・ホイ・クアンのセリフだが、この映画にも通じる部分がたくさんあり、その映画に対するアンチテーゼでもあると思った。

今世では縁がなかった2人が前世、または後世では一緒に幸せに暮らしているかもしれない。そんな中、ヘソンが「もし移住していなかったら〜もし早めに会いに行ってたら〜」と言ったことに対してノラの「もし違う選択を取っていても自分という人間は変わらない」ってセリフがとても刺さった。

初恋はとても貴重なものだが、その人の価値観は年齢と環境によって変わっていく、それがノラの一個一個の発言に映し出されているし、初恋の時の幻想に囚われ続けているヘソンにもとても感情移入してしまった。

この映画は海外移住を経験してるかどうかでだいぶ見え方は変わると思う。だからこそ移民が多いアメリカでヒットし、海外に行ったことが無い人が多い日本ではどのように受け入れられるのかとても興味がある。
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