散歩

パスト ライブス/再会の散歩のレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.1
素直な構成の作品だった事がちょっと意外だったので序盤こそ少しスローな感じに思いましたが、「なんとももどかしい、でもそれが良い…」って作品でした。個人的にはノラとアーサーがベッドで語らっているシーンが、あそこで今作が掴めたような感覚を覚えて好きでしたね。場所があって人がいて時間と選択を経て今があるって感じなのかなぁ。映画なので映画的なIFを幾らでも提示できそうなものなんだけど、今作においてそれらはあくまで過去の幻影や創造に未来の可能性でしかなくて、それが会話と共感の目線で提示されていくっていうのが新鮮で面白かったです。今作を観てて、男性は現実的だけどやっぱりロマンチストで、女性はロマンチストなんだけど現実的なんだなって思ったりもしました。・・・って書いてみたものの人の気持ちなんてそんなハッキリと定義したり割り切ったりできるものでもなくて、人間って肉体的には1つの人生しか歩めないけど頭や心ではいくつもの人生を同時に送っていて、だからこそ今が幸せなのにポッカリと穴が開いたような感覚になったり、可能性を知って後ろ向きになったり、でも将来には意味もなく前向きになれたりして、それが物語になった時にこんなにも切なかったりロマンチックになったりできるのかなって、柄にもなく色々考えてしまいました。メリーゴーランドが回っている中で二人の時間が巻き戻っていくような、そしてそのライトが消えたときに…っていうのも演出として、なんかよく分かんないけど胸に来るものがありました。
「こういう作品は自分には合わないんだろうなぁ」って思いながら観に行ったんですが、いつの間にか好きになっちゃってましたねぇ。良い人しか出てこないからこそ成立する作品ではあるんだけど、そこで(それでも)生まれる距離やテンポがまた良かったです。あと個人的に、ゆっくりカメラが動いたり思ってもいなかったところでカットが変わる作品に弱かったりするので、そういう部分でも大好きな作品でした。
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