良すぎた…………。
設定が36歳で、けっこう同年代なのもあって、Skypeで時差がある中がんばって繋げたり、大事なタイミングで電波悪くなったり、オンラインで話さなくなる=一生の別れとなる可能性を秘めている、とか、個人的にもすごい色々なことを思い出して、昔のシーンだけでも胸がぎゅっとなった。
韓国語での話に夢中になって、訳すの忘れたりめんどくさくなっちゃって、大事なところがlost in translationになっちゃう描写、すごくリアルだった。
アート作品がたくさん出てくる映画なだけあって、1カットで芸術品と言える美しいカットがたくさん…映画として本当に美しい。
セリフがない、もしくは極端に少なくて言葉を交わさないシーンなのに、交わす視線の種類(?)とその長さで、気持ちが通じ合ったことを表現する、説明をせず心情をしっかり描く、丁寧な映画づくりに拍手喝采👏
以下ネタバレ
タラレバを真剣に語るヘソンと、ヘソンから目を離せないノラ、3人でいるのに2人の世界になっていることを露骨に表すカメラワークと、2人の目線が美しくて切なかった…。
そして…旦那さんの優しさ。
「アーサーがいい人だから、辛い」というヘソンの言葉に1億回頷きたい。ラストシーン、悲しくて、溢れる気持ちをどうしたらいいか分からないノラに寄り添うように、外まで出てきて待ってくれているアーサー。ヘソンのことで泣かれるのも辛いだろうし、ヘソンのことでアーサーに胸を借りるノラも辛いだろうけど、その微妙で繊細な痛みを分け合う2人のラストは涙なしには見れなかった…。
「運命」だったとしても、一緒に人生を歩んでいけないこともある。それはノラみたいに、新しい「運命」を「選択」によって切り開いていく人がいるから。運命だけに任せていれば叶わない夢があるし、選択していかないと選べない人生があって。
だけど、選択をもって手にしてきた人生と、運命だったに違いない人生を比べて、突然飛び込んできた「運命」の方を簡単に選べるだろうか。きっと選べない人が多いし、選べないノラの辛さが、ノラを愛するヘソンとアーサーにも、痛いほど分かって。
それが2人の目線からひしひしと伝わってくる、初めてヘソンに会った時のアーサーのうるうるした瞳と、最後、長く、長く、ノラを見つめるヘソンの瞳が切なすぎて、胸にぐさっと刺さった。
遅い時間に観たのに映画館にも年配のカップルがちらほらいて、これは人生を重ねて、何度も観返したい映画がまた増えた。
日本版ポスターが好きだけど、アメリカ版ポスターに使われてる電車のショット、映画観ながら本当に天才だと思ったショットでこれも良くてつらい…………