パスト ライブス／再会のTOYOSUのネタバレレビュー・内容・結末

今年ベスト級でした。
まず都市の切り取り方が美しい。普通ハリウッドとかってよりゴージャスに動的に煌びやかに街を捉えている印象が強いんだけど、本作では基本FIXしたカメラで小津的な空間のレイヤーみたいなものをはっきり写し出している構図でニューヨークを捉えている。だから映画でよく見る街なのに、全く違う異世界のように見える。それは主人公が移民をしてきて捉えているアメリカのようでもあるし、観客を男側の異人のような心地にさせることにも一役かっている気がする。画面の色も淡くて夢心地。どんな工夫をすればあんな映像になるんだろうか。
内容面では、会話の沈黙うまく捉えている映画だなと思った。親しいから、久しぶりにあったから、葛藤しているから、と様々な種類の沈黙が、静的で固い映像の中にすっぽりと収められていて、リアルだなと思った。日本とかアジアのコミュニケーション、は本音と建前があって、その表面が色んな間でせめぎ合っているイメージなんだけど、それを真正面から表現されていると思った。だから、泣いたり叫んだり走ったりといったシーンは無いんだけど、繊細な感情の積み重ねによってはち切れてしまうラストシーンは大感動。夫が外階段で待っている仕掛けも良い。