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パスト ライブス/再会のsyriacusのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.3
まずはセリーヌ・ソンさん、僕を泣かせてくれてありがとう

映画の中のような純粋な恋愛を学生時代にできなかったことの後悔への涙
男としてヘソンとアーサー両方に感情移入したことで溢れた涙

アーサーからするとノアとヘソンの関係は本心的には不快なはず
けれどパートナーの初恋という特別な関係で24年ぶりに再開したのだから彼女の想いを尊重せざるを得ない気持ちもわかる
でも2人が韓国語で話してるときのアーサーの表情が何とも言えない
アーサーは多少韓国語が理解できるから、もしかしたら2人の話していた内容を理解できていたのかもしれない
目の前であそこまで親密にされたら腹立たしくもなるはず
けど、アーサーはヘソンを受け入れている
嫉妬もするけどノアにとって大切な友人であるとわかると受け入れる寛大な心がノアが彼をパートナーに選んだ理由だろうな

そしてどちらかと言ったら自分はヘソン側だなあとは思う
ずっと同じ人に恋心を抱いていて例え相手にパートナーができたとしても遠くまで会いに行くみたいな
直接話せるだけでも嬉しいからね

人間の描き方がリアルだった
特にノアとヘソンがニューヨークで再開したときとか
久しぶりに会うと逆に何を話していいかわからなくなる
ただ嬉し笑いをこぼして肩を触れ(叩き)合う
そういった描写がより涙腺にくる

なんでこの映画にこんなに共感してしまうのかなって考えたときに似たような経験したとがあるんだよね
1人でヨーロッパ旅行行ったとき毎日のように電話してくれる女の子がいた
それこそニューヨークにいるノアとソウルにいるヘソンのようにほぼ半日近い時差があるにも関わらず電話してた
一人旅が寂しかったのもあってか日を重ねるごとに彼女に依存していく自分がいた
彼女も少しこっちに気があったみたい
けど彼女は結構遠くに住んでるからこれ以上親密になっても実際にはほとんど会えないからって理由で連絡とるのやめた
それから1年半後くらいに久しぶりに連絡してみたら電話もすることになった
久々に声を聞いて懐かしく感じ、当時はお互い好きになりかけてたことも確認しあった笑
彼女はいま結婚を考えてる恋人がいるってことも教えてくれた

映画の物語とはスケールが全然違うけど、自分みたいなそれこそ “月並み”な人間でも何かしら人生の中にドラマがある
一回一回の恋愛が前世にあったことのように全く別の人生のもとでおきたようにも思える
理論的には人生は一度きりだけど、成長とともに生まれ変わっている気もする

本作中でも12歳のとき、24歳のとき、36歳のときと3つの年代ごとに描かれていた
そして登場人物それぞれの考え方や生き様が変わっていく
それが前世から今世、今世から来世に移ろっているよう
けど “イニョン”で繋がっているから例え生きる世界が違っても存在は消えないのだろう

撮影技法に関しては、光の使い方がとても上手だと思った
水面の反射を映す構図や、逆光に映る登場人物たちが美しかった
特にホテルの前で逆光のなかタバコを吸うヘソンはめちゃくちゃカッコよかったし哀愁も漂ってた
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