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パスト ライブス/再会のmplaceのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
3.9
幼い頃の初恋の相手と大人になってから再会するというのは物語ではよくある設定だが、そこに国際性と静謐さ、そして音楽と映像美をバランスよく絡め合わせる事でとても上品で大人の物語に仕上げられている。

ノラとヘソン、そしてアーサーの3人が並んでバーで座っているシーンは、愛情や心象を共有しながらも同じ言語を共有しない者同士で同席したことがある人にとってはとても共感できるくだりではないかと思う。
ある人とは過去を共有し、また別の人とは今を共有する。そしてその第三者同士は、お互いに過去も今も言語も共有し得ない事に淡い哀しみを共有する。

相手と共有が不可能な事実を受容することで、逆に共有できるもののありがたさが増し、愛でることができるのだ。
そんな優しさに溢れた良作。

セリーヌ・ソン監督は韓国系カナダ人、グレタ・リーは韓国系米国人、ユ・テオはドイツ生まれ育ちの韓国人、という移民としてのバックグラウンドを持つ監督と俳優によって作られていることも、国際性の高さをうまく内包する事に成功している要因の一つなのかもしれないとも思う。
今後もこのようなアジア系の映画関係者による質が高く、国際的にも広く受け入れられやすい作品がさらに生まれていく事に期待。

ただ登場人物全員が優秀すぎて現実味が薄いというのはあるかもしれない。
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