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パスト ライブス/再会のカポERRORのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
3.6
【男女間の感想の違いについて統計を取りたい作品No.1!】

正直に言う。
私は一昨日、本作を鑑賞してきたのだが、見終わった時のドス黒いマグマの様な感情が自分自身嫌で嫌で、到底冷静になれそうになかったため、少し時間を置くことにした。
だが、冷静さを取り戻してみると、今度は、本作に対する色々な人の感想を聞いてみたくなったのである。
とりわけ、男性・女性で本作に対する感じ方に大きな違いがある様な気がするのだ。
今どき、こんなことを言うと、男女差別だの女性蔑視だのジェンダーフリー意識欠如だのとあちこちから揶揄されるかもしれない。
しかし、常日頃から女性の感性をリスペクトしてやまない私にしてみたら、そんなの頓珍漢な言いがかりだ。
女性の感じ方、男性の感じ方、それぞれの違いや傾向を知りたいと思うことは、差別に根差したものではなく、多様性への理解に根差したものに他ならないのだから。
そうした意図を汲んで頂き、以下に綴る私の個人的な感想を、どうか大きな心で受け止めて頂きたい。
怒っちゃヤーヨ(*´³`*)

✤✤✤

本作は素晴らしい作品である。
誰しも抱いたことのある、ときめき、安堵、不安、苦悩、失望、そして追憶…。
グレタ・リーら優れた演者の繊細且つ豊かな表現力によって、鑑賞者は否応なく主人公達の恋模様に感情移入させられてしまうのだ。
そしてソウル⇔ニューヨーク▶︎ロケーションの妙、アシンメトリーの絵画的背景、効果的に使われる長回し、表情のアップ&アップ&アップ etc…様々なアーティスティックな演出は、没入感を確実に助長させている。
これは実に高純度な視覚的文学作品だ。

だが…
…それ故に…
…感情移入力の人一倍高い男の私は…



…ノラがどうしても許せなかったのだ。

本作を、昔のカサブタを愛でるように観られれば良かった。
だが、そうはいかなかった。
私にとって本作は、夢を追う闊達で奔放な一人の女性に、振り回され、翻弄され、ズタズタに蹂躙され…それでも彼女を愛してやまない女々しい(これも差別用語?)二人の男の物語以外の何物でもない。
彼女を挟んで画角に収まる不釣り合いな3人の居住まいを、しみじみと頷き許容できるほど、私は達観してはいなかったのである。
作中、折に触れて登場するイニョン(因縁)という思想。
8000回もの輪廻転生の中で、縁(えにし)に繋がれた二人の糸は決して途切れることはなく、再びまた何らかの形で巡り会うのだと語られる。
その語りとセットで描かれるノラの思わせ振りな素振り。
貴方とは…きっと前世・来世でも…。
抱きついては突き放す。
トドメを刺したのは、ラストでノラが再会したヘソンに放つこんな主旨の台詞。(※一言一句は覚えていないので不確かだが。)
「貴方が追い求めていたのは12歳の頃の泣き虫だった私。彼女は居なくなったんじゃない。私があの時貴方のもとに置いてきたの。」
…24年間、彼女のことを思い続け、ようやく再会出来て感無量のヘソンへの一言がこれである。
これほど鋭利で残酷なジャックナイフのような言い草は、果たして他にあるだろうか。
更に、彼女の夫アーサー。
彼は、彼女と初恋相手ヘソンの再会に何故か立ち会わされ、理解不能な二人の仲睦まじい韓国語の会話をひたすら脇で聞かされ、挙句の果てにそんなヘソンと今生の別れを告げてギャン泣きする彼女に抱きつかれるのだ。
はっきり言おう。
ノラよ、これはもう愛という名を借りたハラスメントに他ならない。
そう、『ラブハラ』だー!ヽ(#`Д´)ノ┌┛〃

✤✤✤

と、こうまでハイテンションで書きたくなる程、本作の感情移入度は半端ない。
それは間違いなく、名作たる所以。
あれこれ好き勝手書いたが、言わずもがな感想は星の数ほどあり、正解や不正解などありはしない。
私はどんな感想にも興味を惹かれるし、自分と違う感想にこそ勉強もさせられるので、基本的にどんなレビューにも全てリスペクトを込めて”いいね”派だ。
だが、今回ばかりは違った意味で気になるのだ。
男性と女性の抱く本作への感想の差異と、各々の感じ方の傾向が。
何処かでアンケートでも取ってくれないだろうか?
Filmarksさん、ヨロシコ。
ちなみに、私はそのアンケートのコメント欄にこう書くつもりだ。
『ノラには…チャンバラトリオのハリセンをフルパワーでお見舞してやりたいっっ!』
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