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パスト ライブス/再会のメッチのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.9
美しかった。前世で結ばれていたかもしれない3人と変化を求めた者に捧げられていたようで。

「摂理」または「運命」という意味を持つ韓国の言葉「イニョン」。でもこの言葉はまるで、「縁」でもあるけれども、前世でも会っていた「運命」というロマンチックな意味合いのようで、一つの川ともう一つの川の水が上流から下流に流れてゆき合流する「摂理」のような、一言では言い表せない複雑さがある。
ノラは未来を生きているようで、ヘソンは過去を生きているようで…。そんな生き方が違う2人は、離れ離れになったにも関わらず、また再会する。それは「前世」ではどんな関係だったのか?そう考えてしまう。
『PAST LIVES』というタイトルに、恋愛という視点もそうですが、人と人との繋がりとは?という視点も同時にみてしまっていました。

あらすじといっても、24年間すれ違っていた幼馴染みの2人。アメリカへ移住したノラは結婚して旦那がいて、そんなことを知って何年か経ってからヘソンは意を決してアメリカへ行き、2人が再会を果たして互いに想いを語るというだけ。
これだけだと、ただのラブストーリーとかイフストーリー系のようにも捉えられてしまいそう。でも、そう単純な話でもないようで、この物語は一方が初恋から想いは変わらず、もう一方はというと昔は昔で今は今だったけれども揺らぐ気持ちが表れる。そんな恋愛描写も主軸だったけれども、自分自身はどう生きていくべきか?みたいな選択ありきの生き方の描写が主軸だったかとみていて思いました。

そう思ったのも、ノラに感情移入していたからでしょうかね。ノラは野心家というまでではないかもしれませんが、変化を恐れないような常に高い目標を持っている印象を持ちました。それは、映画監督の父親と画家の母親の元で育ち、カナダへ移住する際も母親が「何かを捨てることで、得られるものがある。」と考えを語るところをみると、彼女の何かを成し遂げたいという考え方が養われても自然だなと。
なので、24歳のときにお互いがそれぞれの環境にいて、ノラはヘソンと再会したにも関わらず距離を置いたのも、彼女には夢や目標があったからでしょう。

最後に、人生は「あの時あの選択をしていれば良かった」と思ってしまうことの連続かもしれません。
でも、「あの時この選択をしていたから今がある」というように、恐れずにその選択をしたこと肯定してくれる、そんな素敵な作品でした。
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