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パスト ライブス/再会のryoのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
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時間は流れていく。
そして、過ぎていった一瞬一瞬の時間は、その時だけのもの。
過去を同じ形で取り戻す事など出来ない、ある意味で残酷な時間。

ただ、その諦めは、決して後ろ向きではなく、美しい刹那を感じる。積み重ねてきた時間や関係は、もう取り戻せないから意味のない事ではなく、確かにあった過去のかけがえない時間。少女、少年だったあの私たちは過去に置いてきた。
そして、また縁が巡る事を思い、今を生きる。

この現在と過去のバランスを取っていたジョンマガロ演じるアーサーがとても良かった。
理想に比べれば非常に現実的な2人の物語、そして日常。
甘美な過去にバランスが振れざるを得ない中で、その不安を素直に表現しながらも今を歩もうとするその姿。
過去のノスタルジーを抱えながら、今を生きていく、これはアーサーあってこそのバランスだと思う。

ある意味、力を抜いて、流されゆく時間に身を委ねた運命論、縁の捉え方。
自分も10年前ならこんな事は思えなかったかもしれない。自分も歳を重ねているのだと、色んなものを過去に置いてきて、今を生きているのだと染み染みと感じた。

心理状態と連動するカーテンから漏れる繊細な光の描写にはグッときた。
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